マッキントッシュ邸を後にして 10
領都ベレタの街中を、四頭立ての馬車に乗り込み、ゆっくりと進む。その豪華な室内に、あたしと侍女のジェシカ・ハウスマンさん並びに、メイドのサリーさん。オマケにクリス・バートランドさんが座っている。
女の匂いが、この室内には充満している。決して居心地の良い物では無いのだけれど。あたしを抜かして、皆結構な美人さんだから、周りを歩く男共にとっては、堪らないだろうなと思う。この車内にいるのは、結構ストレスに成る。一応御嬢様付きの侍女とその下に付いているメイドが二人。有り触れた構成だけれど。雰囲気は最悪だ。
あたしの視界には、お仕着せのメイド服を着た三人の美女。金髪碧眼の、妙齢の御婦人と、若い活発な御令嬢。何処か大人びた容姿の令嬢。
男なら、パラダイスと思うかも知れ無い。でもね、お互い気心が知れているわけでも無い。得に、バートランドさんにとっては針のむしろの上に座っているような感じがしているだろう。それでも、彼の仕事に戻らせたくはなかった。何より、あたしの代わりに、ディックたちとの接触を為て貰いたかったから。あたし付のメイドに成って貰った。
後で、奥様にお願いするつもり。何となくではあるけれど。あたしの我儘を聞いてくれるような気がしてもいるんだ。
あたしは、領都ベレタに残している問題を、一切解決できないまま、離れなければならない。其れは心残りであるのだけれど。そう長くあの街に、留まってもいられない。だから、あそこに残っているドリーさんに期待を掛けて、出発しなければならなかった。
僅かな間に、子爵とは言え。領主の秘密に迫れるとも思えないし。何より、あたしが居ると警戒もするだろうしね。これは、何となくあの人も誰かに填められているような気がしているし。何しろ、彼の橋が落ちていたなら、立場が結構悪くなってしまっただろうからね。
これはあくまでもあたしの心証だけども。彼のマッキントッシュ卿は、自分の父親を殺して、領主になりたいと考えるようには見えなかった。僅かな間しか付き合っていないから、本当のところは判らないのだけれども。父親殺しをするほどの度胸は無いような気がしてもいるのよね。
勿論、可笑しな事もたくさん有るのだけれど。決定的な証拠になる物が、見付けられない以上。あたしとしては、予定通りデニム家からの援助金をおいていかなければならない。後で後悔することになるかも知れ無いけれど。此所の領民が、助かるような使い方をしてくれることを願うしかなかった。
毎日、熱中症に成りながら生きております。皆様もこのあた差には気を付けてお過ごしください。




