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山猫は月夜に笑う 呪われた双子の悪役令嬢に転生しちゃったよ  作者: あの1号


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マッキントッシュ邸を後にして 7

 比較的楽な造りのドレスとはいえ、正直着ていて着心地が良いとは言えない。何しろ、色々なところが締め付けられて、動き回れる物でも無いから。何しろこの世界に、伸縮性の良い布は開発されていないし。絹製のドレスと違って、木綿だから着ていられるのだけれど。


 何しろ、絹製のドレスは目玉が飛び出るほどお高いし。勿論、今あたしが着て居るドレスだって、平民には一生袖を通すことの出来ない物だ。本当に気を遣う衣装としか言いようが無い。だって、汚したら大変なんだ。


 だから、昔読んだ悪役令嬢が、ドレスにわざとワインをこぼすなんて、考えるだけでとんでもないことなんだ。貴族のドレスはそう簡単に洗うことが出来ない。だから、悪役令嬢マリアが意地悪でドレスを汚すなんて事は、結構大事だって言うことが判る。


 この世界には、クリーニング屋さんなんか存在していないし。洗濯メイドはいるけれど。其れはあくまでも、お仕着せの丈夫な使用人が着て居る服に限られている。貴族が着ているような、衣装を簡単に洗えるわけがないんだ。これは聞いた話だけれど。一端分解して、優しく手洗いが基本だそうだ。


 そうなってくると、洗濯メイドが手がけることなんか出来ない。其れなりの専門職の仕事になる。其れがクリーニングって言えなくもないけれど。どちらかと言えば、もう一度作り直しになる感じだ。


 実は大変気まずい光景が、あたしの前に展開している。あたしの仕事部屋になっている、貴賓室の中に、毛色の変わった女たちが勢揃いしていたからね。一部愛好家たちに言わせれば、きっとパラダイスなんだろうけれど。勘弁して貰いたい。


 あたしが何時も書類を読んでいるテーブルには、クリス・バートランドさんが纏めてくれた、書類の束がおかれている。あたしがアップル隊を待っている間、彼女が問題と思われるカ所の抜粋を纏めてくれていた。実際其れは満足できる仕事ではあったんだけど。


 あたしが花摘みに部屋に戻ったのに気付いた、ジェシカ・ハウスマンさんが後を追ってきた。マッキントッシュ卿から逃げ出してきたと睨んではいるけどね。


 悪いことに、あたしに纏めてくれた内容を説明して貰っているときに、ジェシカ・ハウスマンさんが遣ってきてしまったのが原因なんだ。あたしの右隣に、座って書類の説明をしていた、クリス・バートランドさんを発見されてしまった。


 二人は親友とは言えなかったけれど。其れなりには話すことのある関係だったはずなのに、この気まずい雰囲気は何だろう。因みに、一緒にいたサリーさんは、部屋の片隅で、気配を消して佇んでいる。流石ベテランメイド、この気配の消し方は見習いたいと思う。


「貴女。今の立場を判っているの」

「其れは重々承知しております」

「本来ならば、貴女は此所に居る事なんて出来ないのよ。其れが、御嬢様と同じ視線で、話すことなど出来ないことは判っているでしょう」


 ジェシカ・ハウスマンさんは、かなりご立腹の様子で、一寸怖いくらいに、目がつり上がっている。相当卿に粘られたみたいで、その不満を此所でぶちまけているのかも知れなかったけれど。このまま、キャットファイトにならないことを祈りたい気持ちになる。


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