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山猫は月夜に笑う 呪われた双子の悪役令嬢に転生しちゃったよ  作者: あの1号


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姫様からのむちゃ振り

 宿の一室で、一人溜息を付きながら、姫様からの無理難題の手紙を読み終えたところだ。その手紙を、部屋の隅にしつらえられている暖炉の中に、放り込む。見る間に手紙は燃え上がり、僅かな燃えかすになった。


 商談という情報収集作業を終えて、夕食を取るために戻ってくると、ニッコリと名乗る兵士が、宿の若い下働きに接待されながら、待っていた。領都デイロウの中で、見かけたことのある兵士だ。結構腕が立つ男だったと記憶している。


 あの男は、この雨のなかを、姫様からの手紙を持ってきた。かなり重要な内容らしく、此所の使用人に渡すことなく、待っていたとのことだった。手紙の内容は、マッキントッシュ卿のこれまでの行動の詳細を調べて、姫様が戻るまでに纏めておくようにとのことだ。それと、マッキントッシュ卿の屋敷の何処かに隠されている、秘密の書類の類いを見付けるように、お願いという言葉に隠された、命令だった。


 屋敷内には、影が存在していない。何故か、頭の息が掛かっている影は辞めさせられてしまっている。もしも、そう言った秘密の書類を手に入れるためには、忍び込むしかないのだけれど。彼の御屋敷は、家捜しするには広すぎた。


 自然と溜息が漏れる。頭の話だと、彼の姫様は昔の奥様にそっくりだそうだ。呪われた双子の片割れ。真面なマリア様と異なり、彼の奔放でそれでいて、憎めない性格は狡いと思う。


 捨てられた赤ん坊を、誰にも内緒で連れ去り。出奔したウエルテス・ハーケンが育てた娘は、とんでもない女傑に育った。たぶんそうなるように、あの男が育てたんだろうけれど。


 お陰で、王女時代を知る連中からは、実は大人気だったりする。何としても、取り込んで次代を担う人物にしたいと考えている。得に、彼の頭はその筆頭に挙げられるだろう。


 この間起こった、サーコートを着せての、大立周りなんか、文字道理の頭の狙い通りの展開だった。あれで、アリス王女を知る連中が、そっくりな姫様の存在に気が付いた。連中の意気は天元突破しているに違いない。


 自分達を守るために、奥様は自分を犠牲にして、大国の支援を取り付けてくれた。その結果が、このマルーン邦のあり方だ。本来ならば、マルーン王国最強の騎士との婚姻が、噂されていたのにも拘わらず。


 今では、あんな碌でなしの伯爵の妻だ。頭は今でも納得していない。そして、俺達下々の人間ですら、納得しているわけがないんだ。


 


 

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