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山猫は月夜に笑う 呪われた双子の悪役令嬢に転生しちゃったよ  作者: あの1号


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楽しいお使い 3

 捲くか返り討ちか。


 遣りようによっては、捲けるだろうけれど。其れなりに頭を使わないといけないだろう。返り討ちなら、其れほど難しくも無いかも知れない。ただ、面倒ごとは御免だ。


 尾行しているのは三人。どういった目的なのか、判らないのが鬱陶しい。雨のなかとは言え、人の目も有るから。そう簡単に、荒事に発展もしないだろうけれど。それでも、このまま尾行を引き連れて、歩き回るのも面倒だ。


 連中を連れ歩きながら、職人街に行き。木工製品を物色するのも、悪くはないが。楽しくお買い物をしているのに、邪魔されるのも鬱陶しい。


 ニッコリは、捲けるなら捲く方向で、動き其れでも出来そうに無ければ。少々手荒な手を使って、返り討ちを試みることにする。歩き回っているうちに、奴らの目的も見えてくるだろう。


 この街に到着したときに、仲間と町歩きと称して、軽く散歩をしておいて良かった。流石に地元の人間と違って、土地勘はあまりないけれども。それでも迷わない程度には、地図が頭に入っている。


 歩く速度を少しずつ速めながら、迷わないように気を付けながら、いくつかの路地を曲がってゆく。この街の特徴として、狭い道がまるで、迷路の様に造られている。そう言う意味では、逃げる立場のニッコリには不利な状況だ。それでも、命令となれば熟さなければならない。


 こう言った不利な状況でこそ、ニッコリの頬が緩んでくる。兎に角こう言った状況は、楽しくて仕方が無かった。相手は見た感じ大したことが無い。これが、絶対に逃げることが出来ないような、一流どころなら、楽しめないだろう。追っ手の中に、彼の嬢ちゃんの親父さんでも居たら、絶望しかなかっただろうから。


 肩を打つ雨が、昨期より強くなってくる。頭上を見上げると、低い雲が重たく支配している。


 流石に支給品のコートでも、下に着込んでいる服にまで、雨水が広がってきて、少しばかり、重たくなってきた。一仕事追えたら、腰に下げているショートソードを手入れしておかないと、後で後悔しそうな予感がする。


 隊が寝泊まりしている場所には、身体を洗えるような場所があっただろうか。そんなことを考えながら、更に足を速める。足下を確り固める、靴もこれまた支給品で、結構な優れものだ。こう言った細々とした、装備のできは良い物が揃えられている。


 こう言った装備の出来不出来が、ギリギリの命の遣り取りに関わってくることを、この邦の支配者様はよく知っている。そのお陰で、この雨のなかで、すっころぶことも心配しないで済む。


 細い路地裏の一郭で、見窄らしい格好を為た、おっさんが何処か不満そうに、軒下で雨宿りをしている。其れを見たときに、ニッコリは、更に足を速めた。元々、足には自信がある部隊の一人だ。普段、御者ばかり遣っているわけでも無い。


 走り出したら、そう簡単に追い着かれるとも思っていない。少し不安があるとしたら、地元ではないから、土地勘に難がある程度だ。その辺りは、長年の経験がカバーしてくれるだろう。


「悪いな」

「なにしやがる」


 雨を忌々しそうに、眺めているおっさんを引き倒し。後続の邪魔をさせる。おっさんの文句があがった。




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