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スプーン一杯分の不正と一寸したお使い 4

 腹の虫がぐうと鳴く。結構な雨音が、為ている。そのBGMを聴きながら、あたしは客室のテーブルに向かい、ディックさんにお手紙を書いている。朝とは言え、天気は雨だ。如何しても、手元は暗くなる。文字を書くのに、困る暗さではないけれど。普通の人なら、困るくらいには暗い。だから、一応ランプに火を入れてはいる。


 手紙の内容は、マッキントッシュ家に巣くう鼠の存在と。マッキントッシュ卿が明らかに、何処かと戦争を画策している可能性と。其れと直接打ち合わせが為たいという、此方のお願いを書き込んだ。其れと、その際に渡すために必要な、怪しい書類を書き写す。


 其れだけでも、小一時間は経過してしまった。朝食の準備が整うには、未だ時間が、掛かるのだろうか。こんな事なら、朝飯前に終わらそうとなんか為なければ良かった。


 そんなことを考えながら、休憩していると、扉を叩く音。返事をすると、メイドのサリーさんが声を掛けてくる。食事を持ってきてくれたみたいだ。朝から豪華な食事なんか期待していない。取りあえずこの腹の虫が泣き止む程度で構わない。


 サリーさんが、扉を押し開くと、良い匂いがお腹の虫を刺激する。

 彼女が押して来た、ワゴンの上の段には、焼きたての、白パンと具だくさんのスープ。ポットが二つ。一つは、恐らくお湯が入れられているのだろう。あと一つは、水で薄められたワインだと思う。


 下の段には、食事で使うためのカップやカトラリーが置かれていた。何時ものように、カトラリーは銀製品である。毒殺の可能性がある以上、如何しても欠かせない品物だ。


 こうして考えると、結構危険な立場に立っているんだなって思う。貴族はそう言う意味で、ストレスが多い立場に立たされている。普通に考えたら、十三歳の小娘を毒殺する理由なんか無いだろうに。因みに、此所に持ってくる間に、毒味は誰かがやっている。


「御嬢様。今日から私が給仕をさせていただきますね」

「何故なのかしら」

「その様に、ハウスマン様のお言いつけで御座います。毒味は既に終わらせておりますから」


 どうも、ハウスマンさんは彼の爺さんが、毒殺されたと思ってるみたいだ。つまり、この御屋敷の中に、犯人がいる可能性が出て来たってわけだ。その上、マッキントッシュ卿を余り信頼できないって言っている。


 あたしの方は、マッキントッシュ卿の不正に気付いているし。勿論証拠の品なんかは、掴んでいないから、怪しく思っているだけだけど。その程度なら、彼の咎を追求できない。この程度なら、叛意在りとは言えないからね。何しろ、これぐらいなら何処の貴族もやっていることだ。その辺りを目くじら立てて、追求したところで、どうにも成らない。


 精々、小役人が詰め腹きる形になって終わりだ。其れよりも、勝手に戦争準備を為ていることの方が問題だ。其れも、デニム家の復興援助資金を使っている。


 でも、困った事に、上手く誤魔化している。其れを指摘するだけの証拠がない。そう簡単に、騒ぎを起こすことなんかできないだろうけれど。一地方領主がすることとしては、許されないことだ。


 既に、マッキントッシュ家が所有してた、港町はマルーン王国が、マルーン邦の成るきっかけの戦争で、野蛮人たちによって奪われてしまってる。でも敗戦が確定して、お互いに条約も締結されているから、其れを今更どうこうすることなんか出来ない筈なんだけど。


 



 

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