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山猫は月夜に笑う 呪われた双子の悪役令嬢に転生しちゃったよ  作者: あの1号


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スプーン一杯分の不正と一寸したお使い 2

 扉をノックする音が、寝室に使っている部屋の扉を誰かがノックしてきた。恐らくサリーさんだろう。


 あたしは何時ものように、返事を返す。この辺りは最近成れてきた。殆どルーチンとなっている。本来は、侍女のジェシカ・ハウスマンさんが起こしに来るべきらしいけれど。最近は、その辺りなあなあに成りつつある。


 あたし的には、その方が有難かったりするんだけれど。だって、ジェシカ・ハウスマンさんは、一応下級貴族とは言え御貴族様の令嬢だったりするのだから、平民でしかないあたしは、少し気詰まりだったりするのよね。


 寝起きの顔を見られながらの、身支度は結構気が引ける。この遠征に出てからと言う物、こうやって身の回りの世話をしてくれるのが、サリーさんの仕事に成った。正直申し訳なく思っている。


 メイドとしては、あたしなんか未だに見習いでしかない。そのあたしが、ベテランの彼女に世話をさせている。本当に申し訳ない。奥様の命令とは言え、内心はどう思っているのか判らない。内心嫌なんじゃ無いかって思う。彼女の立場に立って考えれば、いくら奥様のご命令でも、ひよっこ相手に貴族の御嬢様相手にするように、接するのは嫌だからね。


 扉が開かれて、ワゴンを押したサリーさんが立っている。何時ものように、くすんだ色の銀髪を、ヘッドドレスで纏めている。軽く膝曲げてを曲げて、簡易なコーツイをしながら、朝の挨拶をしてくれる。


「お早う御座います。昨夜も遅くまでご苦労様です」

「はい。お早う御座います」


 ワゴンの上には、木製の桶と何枚かのタオル。手鏡に専用の櫛が載せられている。いわゆる朝の身支度セットだ。ワゴンの下には、比較的楽に着ることが出来る、紺色のワンピースが畳まれている。今日の予定としては、この雨でもあるし、一日中部屋に籠もる予定に成っているから。何の問題も無い。


 実際、あれだけの書類を読み終わるとは、思っていなかったから、今日一日部屋から出ないって昨日、宣言しておいたからこうなった。


 よくこんなに着替えを用意したもんだと思うわ。勿論、寄った先で洗濯もされているし。公務のさいに着るドレスなんかは、結構馬車に乗せているのは知っている。それでも、洗濯された物が必ず、朝には用意されている。


 何しろ、あたしだけでも多いときには、一日に着替えることが三回もあるんだから。大変な労力だと思う。


 柔らかな笑顔を、あたしに向けながら、サリーさんが扉を閉める。そこからは、メイドが主人に対する態度よりは、砕けた物に成る。なに為ろ、彼女はあたしが、なんちゃってマリアを演じている、見習いメイドのナーラダのリコだって知っているのだから。


「余り寝ていないでしょう。いくら若くても、身が持たないわよ」


 ワゴンの上に載せられた、桶に入れられた、少量のお湯にタオルを浸しながら、あたしの顔をまじまじと見詰めている。何時ものことだけれど、いわゆる健康状態のチェックをしてるみたいなんだよね。流石にベテランメイドって処かな。


 因みに、侍女のジェシカ・ハウスマンさんはこんな事を言ってくれたことは無い。あたしが調子が悪くても、殆ど気にもしない。あの人脳筋だから、その辺り雑みたいなのよね。



 



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