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山猫は月夜に笑う 呪われた双子の悪役令嬢に転生しちゃったよ  作者: あの1号


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訳あり令嬢 7

 クリス・バートランドさんは、少し控えめに、あたしの二の腕の辺りを見詰めている。整った顔立ちの彼女は、あそこでも其れなりに人気があっただろう。流石に、稼ぎ頭にまでには成っていないだろうけれど。相手して欲しい男共には事欠かないだろう。高級な娼館なら、一晩で銀貨くらいは稼いでいたんじゃ無いかな。


 今あたしは若しかすると、最低なことを言い出そうとしているのかも知れない。彼女の持ち主が、リントンさんの下部組織だって聞いて、話しの持っていき方で、これだけ仕える手を、得られるかも知れないのだから。


 自分のお金を使わずに、奴隷を一人自由に出来るようにする。余り尊敬されるようなことでは無い。実際、奴隷を使っている貴族は、このマルーン邦の中で、尊敬はされない。制度的に、認められてはいるけれど。成るべく人には、知られないようにする。其れが、人の上に立つ貴族のあり方と、建前としてされていた。


 建前としては、立派なことではあるのだけれど。神殿でも、奴隷を使っていることも在り。ただ、あたしにも昔の記憶があるせいで、奴隷制度に対して、思うところが在る。でも、今はクリス・バートランドさんが、奴隷であったことが良かったのかも知れない。ましてや、その持ち主がリントンさんの下部組織だって言うのは、ラッキーなことだと思う。


 彼女の使い道としては、男の人のお相手をさせるより。あたしの手伝いを為て貰った方が、邦にとって良いと思う.マッキントッシュ家だけじゃ無く、もう一つの大きな砦の中でも、こうして書類を精査することになるかも知れない。そんなとき、あたしの代わりに、書類を読んでくれる人が欲しい。


 自分を買い戻すことが出来る可能性が有ると成れば、真剣に仕事を為て貰える。少なくとも、あそこで男の人の相手をしているより。ずっと早く、自分を買い戻せるようになると思うんだ。


 どれくらいのお金で、彼女が売り買いされていたのか判らないけれど。三年も彼の仕事をしてんたんじゃ。気質には戻れなくなってしまうような気がするから。


 手が届くなら、何とか足を洗わせてあげたい。これは、あたしの都合だ。あたしはいい人では無い。彼女の、この能力に魅力を感じているからだ。男なんかを相手にしているより、あたしの手伝いを為てくれた方が良いと思う。少し傲慢かも知れないけれど。これは通してしまいたいことだった。


 肌感覚で、リントンさんはあたしのお願いを聞いてくれる確信を持っている。其れが、リントンさんへの借りになるのかも知れない。それでも、今は目の前の、優秀な人を逃したくは無かった。


 思い切って誘ってみようか。あそこで働くより、旨味のある仕事だと思うし。勿論、あたしには権限なんか全くない。それでも、何となく上手く行くような予感がしている。


 あんまり多用していると、リントンさん達の思惑に乗ることになりそうだから、考え物ではあるのだけれど。あたしとしても、上手い事乙女ゲームが始まる前に、其れなりに仕える手札を増やしておきたい。せめて、悪役令嬢マリアの抱えていた程度の、味方を作っておかないと、困った事に成るかも知れないしね。





 




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