表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
山猫は月夜に笑う 呪われた双子の悪役令嬢に転生しちゃったよ  作者: あの1号


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1129/1217

訳あり令嬢 2

「いえ。そんなことはありません。今は既に終わってしまったことですから」


 ぽつぽつと下を向きながら、クリス・バートランドさんは、幼い頃のジェシカ・ハウスマンさんの話をしてくれる。話の内容から、二人はいわゆる幼なじみ的な関係のようだった。二人はこれからもずっと幸せが続くと、心から信じていた。


 お互いに貴族令嬢とは言え、次女以降である関係上。其れほど親の手がかりによる、婚姻を期待できない。そうなると、何処か適当な貴族家へ奉公に出ることで、より良い殿方を射止める必要があった。もとより女の幸せという物は、より条件の良い家へ嫁入りすることだった。


 それからの話しは、バートランドさんにとっては幸せだったときの記憶だった。ただ、彼女の望みは少し変わっていた。其処に結婚為て、裕福な暮らしをすることでも無く。男の妻となるよりも、自分の能力をフルに使って、何かをしてみたい。


 漠然とした幼い娘の、夢物語でしか無いことを、家の行っていた不正が、発覚して、貴族位を剥奪されることによって。夢も希望も全てが、絶望の色に染め上げられた。それ以来、ジェシカ・ハウスマンと遭うことも無く。


 それからは、大袈裟でも無く子爵令嬢としてプライドも剥ぎ取られ、女としての矜持すら踏みにじられる生活が待っていた。最終的には、仲買人の手で、彼の娼館擬きの店に流れ着いた。


 其れが僅かな幸運だったのかも知れない。何より彼の店は、デニム家の下部組織の一つだったのだから。


 クリス・バートランドさんは、これまでの事を話してくれた。本来なら、こんな事を話す事なんてない。実際、休憩中に話すようなことでも無い。



 彼女の仕事をする様子から、出来ればこのまま、一緒に手助けを為て貰いたいと思ったからだ。その為には、ある程度の経歴が知りたいと思った。だから、話をしてくれるように誘導したのだけれど。一寸かなり重たい物に成った。


 だいたいは想像していた通りだけれど。思いの外厳しくて辛い内容に成った。中には、ああいったことが好きな人も居るし。仕方なくそう言う事を為て居る人も居る。


 乙女ゲームさくらいろのきみに・・・の中では、先ず語られないような話だ。何しろ、貴族達の中でも、色恋の話しでしか無い。ただ、ああいったお花畑の足下には、其れこそ色々な虫がうごめいている世界でも在る。


 貴族から、平民に落ちると言うことが、どれほどの悲劇に見舞われることなのか。これまで、其れこそ大事に囲われていた物が、悪意にさらされることが辛いことか。


 だからと言って、あたしが同情するわけにも行かない。世界には、良く在る有り触れた話でしか無いのだから。


 今考えているのは、奥様がこの人を雇ってくれるかどうかだ。今の頃、彼女は影としての仕事のために、あたしの手伝いを為てくれている。


 このクリス・バートランドという女の人が、このままあそこで生活できるのだろうか。私が知っている、ああいった仕事を為ている女性で、こんな感じの人を見たことが無い。ぶっちゃけ向きじゃ無いんだ。


 何となくだけれど。このまま、彼の仕事を為ていても、心が壊れて可笑しくなる未来しか見えない。何処か、母ちゃんの弱さを思い出させる。若しかすると、少し、病み始めているのかも知れない。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ