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山猫は月夜に笑う 呪われた双子の悪役令嬢に転生しちゃったよ  作者: あの1号


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クリス・バートランドの憂鬱 2

 作りかけの城壁を右に見て、私たちはマッキントッシュ邸の敷地内に歩みを進めている。時折見かける使用人や、私兵の人達はこの間発覚した、橋に対する破壊工作のことで、頭がいっぱいに成っているらしく。

 何処にでも居るメイドの格好を為た、私の顔を見る者すら居なかった。ディックは、ナーラダのリコ嬢とは顔見知りで、繋ぎを取るために、デニム家の出入り業者の株を持った商人の格好を為ている。

 ここへ来る前に、彼との打ち合わせで、ナーラダ村へ向かった使用人の中で、月の物が始まってしまったので、急遽遠征隊から戻ってきた使用人という触れ込みで御屋敷に入ることになった。

 ナーラダのリコ嬢が、領都デイロウから連れ出した家族は、殆どマッキントッシュ家の者には顔を見られていない。だから、この手が使える。そう言ったディックの笑顔が何とも言えないくらい、悪そうな顔をしていた。

 月の物が始まってしまった女は、この辺りではうちの中で大人しくしているほかに無かった。何より、下腹部からの血は毒があるなんて言う話もあるくらい。嫌われている。

 こう言う事に成ると、私は何で女なんかに生まれてしまったんだろう。そう神様に文句を言いたくなることもある。何より、こう言う事が有るから女に対して、謂われの無い偏見で見る者も多くいることは本当だ。

 ちゃんとした教育を施されれば、能力に関して言わせてもらえば。男などより、ずっと優秀になれるのに。勿論剣に関しては、一寸無理かも知れないのだが。それでも、この邦の頂点には、アリス・ド・デニム伯爵夫人という女傑が存在している。

 メイドのお仕着せの服に、赤いスカートを合わせて、一目で月の物の最中であることが判る出で立ちで。成るべくゆっくり歩いて、屋敷の廊下を歩く。下腹部に、付けている布が限界を迎えて、床に落ちないか、気が気でも無い気分である。

 下着を使っているとは言え、あまり良い物では無い。正直、新しい下着が欲しいところであるけれど。彼女の手元にある、お金では高価な下着など買うことなど出来ない。ぶっちゃければ、2枚しか持っていないのだ。

 夜のお仕事の時は、ワンピースの下には何も穿いていなくても、何の問題にもならないから。今の彼女には実際高い下着など何枚も買うことなど出来なかった。今穿いている下着は、自分で作った物で、何度も洗って、少しよれよれになってきてしまっていた。

 穿いていた方が喜ぶお客はいる物の。其れは少数派で、大概はそんなこと気にもしない。男は何はともあれ、入れることが出来れば満足するもんだ、その時に多少の演技は居るけれど。因みに、この台詞は、始めて会った時のレイナさんの台詞だ。


「お初にお目に掛かります。私はデイロウで商いを営んでおります、ボレガ商会の番頭を営んでおります。コルと申す者で御座います。実はこの辺りにまで、出掛けてきておりましたが、デニム家の御令嬢が来ておられると聞き及び。御機嫌伺いに参上した次第で御座います」


 ディックさんが、最上級の敬意を表した、挨拶を目の前に居る役人に、遣って見せた。役人は、顎髭を生やした三十代の男で、何処か小物っぽい格好を為ている。実際小物なのだろう。その証拠に、ディックが懐から取り出した、金貨をすかさず受け取っていた。


「そちらのお嬢さんは」

「こちらは、参上する道すがら、一緒になりましたので、同道して頂いた次第です。デニム家のメイドをしており、私どもとは顔見知りでありましたので、ご一緒させて頂いた次第です」


 実に堂に入った口上で、小役人を煙に巻いている。流石に、こう言う嘘を付き成れている。レイナさんの昔なじみは、ベテランのスパイだそうだ。







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