表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1119/1120

書類との格闘 21

 御屋敷に勤めている、メイドさんを一人連れて、ジェシカ・ハウスマンさんが、あたしが詰めている部屋にやってきた。朝食の用意が出来たので、この部屋で食事を取るか、厨房脇にある食堂で、食事をするか尋ねに来たらしい。これまでの食事は、書類仕事を為ながら、食べ続けていたから、少し心配してくれているのだろう。

 心配しているなら、少しでも良いから、書類仕事を手伝ってくれれば良いのに。そうしてくれるなら、あんないけないお店になんか行かなくても済んだんだからね。


「食事くらいまともな物を食べた方が良いと思う。貴女が体調を崩したら、色々と困った事にも成るし。奥様にも顔向けが出来なくなってしまうから」

「それなら、手伝ってくれないかしら。流石にこれだけの書類を読み込むだけでも、かなりの重労働なのよ。それに、この書類の文字の汚さには辟易しているわ」

「なら、何で態々連れてきた者を、他の村に送り出したりしたの。私の立場では、貴女に協力する義務は在りもしないのに」


 確かにこう言った書類仕事は、侍女の仕事では無い。彼女達侍女は、主人の身の回りのことをするのが仕事で、今あたしが遣っているような事は業務の範疇に入っていない。ましてや、あたしは彼女の主人でも無い。あくまでも、マリアの身の回りのお世話をするために来ているだけだ。たとえ、そういった事が出来る能力を持っていたとしても、本人から言い出さない限り、あたしが其れを命じることなんか出来ないんだよね。

 精々、あたしにはお願いするくらいしか出来ない。其れも、相手の好意ありきでもある。何しろあたしは、ただの平民の娘でしか無いのだから。

 一応あたしが、知らないことに成っている、秘密を暴露すれば、状況は違った物に成るのかも知れない。呪われた双子の片割れ、これが明らかになれば、結構な醜聞に成る。何より、デニム家の総意として、呪われた双子は無かったことに為ているのだから。

 リントンさん辺りは、その事を知っているんだろうけれど。表だって事を荒立てる風でも無いし。当然、奥様も気付いて居はいるのだろうけれど。誰も何も言ってこないところを見ると、このままメイド件なんちゃってマリアを続けさせようと、思って居るみたいだからね。

 まあ、あたしとしてもその方が楽ではあるよ。端で見ていると、伯爵令嬢の立場が、結構しんどくて、自由に好きな相手と結婚できるような物でも無いし。権利の大きさと比べると、義務の方が途轍もなく大きいような気がするから。あたしは勘弁なんだよね。

 一時的に、しんどさから逃れるために、もっと大きな、しんどくてめんどいことを抱えてしまいたくも無い。そう言う事は、遣りたい人間に任しておきたいもんだ。

 あたしとしては、このままで良いから。この先に待っている、侵略戦争を回避したいと思っている。最近、悪役令嬢マリアが王都でやらかしたことが、実は引き金になったわけでも無いんじゃないかって、思いだしても居るのよね。

 今回の一件も、此方を侵略しようと考えている連中の、陰謀なんじゃ無いかって思いだしているのよね。何となくだけど、確実にこの邦に被害を及ぼすように事が進んでいる。これって、放置していたなら、間違いなくヤバいことになるような気がする。

 


 


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ