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山猫は月夜に笑う 呪われた双子の悪役令嬢に転生しちゃったよ  作者: あの1号


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書類との格闘 11

 大事なところを蹴られた奴は、跳ね回り痛がる事も出来ないで、蹲っている。思いの外良いところに入ったらしい。潰れていなきゃ良いけれど。

 相棒は意外にも、怒りを顕わにして怒鳴リながらも。相棒の方を優先しているらしく、あたしの事を追っては来なかった。良い奴みたいで、何よりだと思う。追ってきたら、相棒より酷い目に遭ったと思うしね。これに懲りて、追い剥ぎなんか止めれば良いのに。

 仕事があれば、遣らないんだろうけれど。中々そうも行かないから、辛いと頃よね。

 奴らが戦意喪失しているのを確認すると、あたしは踵を返して走り出す。目的地は直ぐ其処だ。早く用事を済ませて、宛がわれた部屋に戻らないといけない。

 明日も、書類との睨めっこが待っている。侍女のジェシカ・ハウスマンさんも、手伝ってくれると助かるんだけどな。繋ぎについて話しておかなかったことが、悔やまれる。

 彼の娼館擬きの店の前に、到着すると。店の中に、何人かのお客の気配に、少し足を止めた。この時間だと、間違いなくサービス目当ての人達だ。そんなところに、女の子が入って行って良い物か。一寸考えると非常識かなって思う。それでも、今のあたしは一寸目には、小さい男の子だ。サーコートとを纏っているから、訳ありだと思われるかも知れないが。

 木造の結構頑丈な造りの、扉を押し開くと。店の奥から、男の野太い声が掛けられる。流石にこの時間に、食事に来る人間は居ないから。主に、そう言う事を目的にしている客だけだ。

 店の中に入ると、格テーブルに一人ずつ待っている男達の、視線があたしに集中してくる。酒が入っている奴殆どで、どう見ても女に相手に為れていなさそうな連中ばかりだ。その何人かは、年齢を考えると、嫁いるよねって言いたい奴も居る。


「悪いな、今は飯は出せないんだ。火は落としちまってね」


 奥にある厨房の中から、おっさんが声を掛けてくる。そうだろうなって思うよ。この時間なら、いくら何でも真面な店なら閉店していても不思議じゃ無い。

 でも此所は、安い娼館だ。あと一人や二人は、お客を受け入れるくらいの時間でもある。何で知ってるかって、たまに父ちゃんもこう言った店に厄介に成っていたからね。その間、あたしは一階の店で、食事をしながら待っていたこともある。良くお姉さん達に可愛がられたっけ。


「レイナに、会いたいんだけど。空いているかな」


 あたしは被っていたフードを、一寸だけ広げて顔をおっさんに見せると、懐から銀貨を取り出した。このおっさんも影の人だと思う。だから、あたしの顔を知っているとは思うんだけど。このおっさんに、昨日会っていないから、難しいだろうか。


「今、一寸客を取っているんで、少しだけ待っていてくれ」


 銀貨を渡して、軽く頭を下げる。

 おっさんが、一寸微笑む。影の人の協力者で間違いないみたいだ。


「次は俺だろう。お前みたいな餓鬼が、レイナの相手して貰おうなんて、十年早いんだ。お家に帰って、ママのおっぱいでも吸ってろ」


 テーブルの処で、大人しく待っていた客が、割り込んできた。横入りしようとしていたら、文句も出るよね。もう少し遅い時間にすれば良かっただろうか。


「悪いね。お客さん。此奴は、彼奴の弟なんだが、急用のようでね。良かったら、次は女の子二人付けるんで、簡便して遣って送れよ」


 流石は影の人、中々機転が利いている。あたしなら、たぶんおたおたするだろうな。其れなりの権限を持った人って事よね。




 


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