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山猫は月夜に笑う 呪われた双子の悪役令嬢に転生しちゃったよ  作者: あの1号


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書類との格闘 9

 夜に成って、辺りは本当の意味での暗闇が支配している。普通の人間には、この暗闇の中で、城壁工事の足場の上を、ランタンも使わずに歩くなんて、正気を疑われるようなことだろう。

 あたしは一寸夜風の気持ちよさに、楽しくなってしまっている。今はレイを伴っていない。完全に単独行動だ。

 半年前と比べると、身体も出来上がっており。力だって、其れなりにはある。身長だって、ほんの少しだけれど高くなった。いわゆる成長期にさしかかっているって事だ。女の子になる日も近い。其れまでに、タンポンを手に入れたい物である。

 あたしはタンポン派だったからね。同僚のメイドさん達の苦労を見ていると、何とかしたいと思っているんだけれど。作ると言っても、そう簡単にはできない物だから、如何した物か悩んでいる。熟々あたしが生きていた世界の、其れだけでもありがたい事だったんだなって思う。

 あたしの脱出経路が、この暗闇の中で、絶対に使わない物だとしても。この警備体制のザルさ加減には、呆れてしまう。これなら、死んじまったルークなら、鼻歌交じで色々と盗みに、入ることが出来るだろう。

 あたしの得意な鍵開けの技術も、音を立てないように歩く方法も、彼奴に教わった物だ。いっぱしの泥棒になれる技術。何で、そんな物あたしに教えることを、彼の父ちゃんが許していたのか、判らないけれど。今のあたしは結構助かっている。

 今日のあたしは普段、猟に出るときに着ている、胴着にズボン、それに顔を隠すために、フード付きのサーコートを着込んでいる。自警団の事件に着ていた物と違って、無地のくすんだ、茶色の生地の物だ。此所の兵隊さんの備品置き場から、失敬してきた物で、用が済んだら返しておかないといけない。汚さないようにしないとな。

 此所の御屋敷に勤める使用人に、影の人との繋ぎをお願いするわけにも行かないし。あたしが知っているのは、彼の怪しげな風俗店しか知らないから。あそこに、お使いを頼むことが難しくてね。それなら、あたしが直接行った方が良いかと思って。こうして夜のお散歩というわけだ。

 我ながら、間抜けでしょうがない。あれだけ長い間、あそこに居たんだから。あの人達との連絡方法を決めておかなかった事は、痛恨の凡ミスだ。

 マッキントッシュ邸の警備体制は、ザルだったんだから、連絡なんか簡単にできるように出来るだろうと思う。其れなのに、その手はずを話し合っておかなかった。心の底から反省しよう。

 まあ、この成りなら女とは思われないだろう。客の中に、ショタコンでも居たら、一寸洒落になら無いだろうけれど。危なくなったら、相手の急所を蹴り上げれば済むことだし。蹴られる相手が、気の毒に成りはするけれど。こんな可愛い女の子に、蹴り上げられるなら本望だろう。

 昨日と同じ手順で、城壁の足場から地上に降り立つと。自分でも登攀の技術に感激する。ついこの間まで、馬車に乗るのも難儀していたのに。身体が、思ったように動く。力も強くなっていて、楽に身体を支えることが出来る。

 流石にこの時間だと、人の気配も辺りには感じられない。流石に、街中とは言えこんなに遅い時間まで、外をうろついているような人間は居ない。居るとすれば、夜の見回りを担当している自警団の団員か、私兵団の当番くらいしかいない。それ以外だと、いわゆる犯罪者の類いだろう。

 繁華街の方は、今でも明るいから、彼の辺りには人通りはあるだろうけれど。其れだって、限られてくる。

 灯りを使わなければ、犯罪者達に目を付けられることもない。何しろ、奴らだって、このあたしを見ることなんか出来ないんだから。それに、足音だって立てないからね。気の弱い人間には、あたしの事は化け物に見えるだろう。







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