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山猫は月夜に笑う 呪われた双子の悪役令嬢に転生しちゃったよ  作者: あの1号


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書類との格闘 8

 今あたしが連れてきている、デニム家の人たちの中で、こう言った書類を読んで、書かれている内容を把握することが出来るのは、レイの奴とジェシカ・ハウスマンさんの二人だけだ。本当に手が足りない。他には、あたしの前で、休ませようとしてくれている、サリーさんは文字は読めるし、簡単な計算も出来るけれど。独特な言い回しで、理解の出来にくくなるように書かれている文章を、解読することが出来るかって言うと、疑問符が付く。

 この御屋敷に勤めているような、文官を連れてくるなんて、論外も甚だしい。あと、当てに成るか判らないけれど。昨夜接触した、リントンさんの影の人達なら、期待できるかも知れない。問題は、どうやってこの屋敷に迎え入れるかって言うことだ。

 もう一度、何処かで接触することが必要に成るかな。誰かこの御屋敷に忍び込んでこないかな。そうすれば、話は簡単に済む。出来れば、マッキントッシュ卿が隠している、内緒の書類にも目を通しておきたいところだから、プロのスパイの人にも協力させようかと、サリーさんが持ってきてくれた焼き菓子に、口を付けながら、あたしは影の人に繋ぎを付けること考え始めた。二日間の貫徹はキツいな。あたしは、十三歳で若いから大丈夫だと信じたいところだ。

 実際悪役令嬢マリアは、リントンさんの影の人ではないけれど、王都で暗躍するのに、レイを頭目にした専業スパイを雇っていた。スパイに成れる者の中で、僅かでは有るけれど、書類を読み解くことの出来る者も居た。そうで無いと、スパイとして遣っていけないって事なんだろう。

 リントンさんが送り込んでいる、影の中にはそう言った能力を持っている、者だって居ると思うから。何とか手伝わせたいと思う。何より、これだけの分量の資料を読むだけでも、しんどくて仕方が無い。

 ディックが言っていたように、お仲間なら手伝ってくれても良いよね。

 ジェシカ・ハウスマンさんは、あれで男爵家の御令嬢だから、あたしみたいな平民のメイドが、仕事をさせるわけにも行かないし。何より、これはあたしが好きで遣っていることだ。それに、彼女にも仕事が有るから、しんどいからと言って、付き合わせるわけにも行かない。

 何故かリントンさんの影の人達は、あたしのお願いを素直に聞いてくれるんだけどね。頭目である、リントンさんに何か命令でもされているんだろう。

 あの人は、どうあっても姫様呼びしたい相手らしいからね。こんな事が続くと、あたしも姫様に成った気分に成ってしまいそうで怖いな。

 あたしは、悪役令嬢マリアの同じ立場になりたくない。そうなると、王国を破滅させた悪役令嬢になっちまうからさ。何のためにマリアを助けたのか判らなくなってしまう。


「サリーさん。食事まで、あとどれ位かしら」

「そうですね。あと小一時間くらいかな」

「今晩は、此所で食事をすることにします。その間、此所で少し仮眠を取ることにしますから、その事をジェシカ・ハウスマンさんに伝えておいてちょうだい」


 サリーさんは安心したように、微笑んで。机の上の食器を片付けてくれた。


「奥様のご命令とはいえ、貴女みたいな子供にさせるのには、この仕事は過酷すぎるから。ほどほどで良いのよ。貴女は、マリア様ではないのだしね」


 そんなことを言いながら、あたしの肩にそっと触れてくる。この人は、本当に心配してくれているのだろう。


「ありがとう。取りあえず寝るわ」




 



 誤字報告ありがとう御座います。本当に助かります。

 

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