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山猫は月夜に笑う 呪われた双子の悪役令嬢に転生しちゃったよ  作者: あの1号


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書類との格闘 4

 マッキントッシュ邸の庭には、彼から借り受けた二頭立ての馬車が、一台用意されている。その他には、一頭立ての小さな荷馬車が付いていくようになる。護衛の兵隊さんは、徒歩での行軍になる。戦争でも無いのに、人数分の馬なんか用意できるわけがない。割と、調教された馬は高価な物なのだ。

 それぞれの御者役は、小隊の人員の中から、持ち回りで御者を務めることになるらしい。流石に、街に住んでいた、家族達は馬なんか扱ったことが無い。だから、ずっと馬車の中に居て貰うことに成る。しんどいだろうけれど、その辺りは我慢して貰うしかない。

 四頭立ての大きな馬車は、正直小回りが利かない上に、橋を一回渡ると、また渡るのに、少し不安が募る。流石に、持ってきた公金は、下ろしているから。思いの外重くはないだろうけれど。それでも、成るべく危険は避けた方が良いって、ジェシカ・ハウスマンさんが言うから。マッキントッシュ家の紋章を掲げている、馬車で行くことになったんだ。

 こっちに連れてきた、二個小隊、総勢二十人のうち、オーベルジュ隊が、此方に居残ることになっている。因みに、この事を決めたのは、矢張りじゃんけんで決めたみたいである。隊の向き不向きじゃなくて、単に隊長のじゃんけんの結果って言うのが、何て言って良いのか、それで良いのか私兵団と声を大きくして言いたかったりする。

 仕事してくれれば、それで良いのだけれど。その辺りについても、所詮あたしに発言権はないんだよね。何しろ、このじゃんけんはたぶん父ちゃんもやっているだろうし。どうも伝統的にやっているみたいなんだ。

 因みに居残り組が、じゃんけんに勝ったみたいなんだよね。あののっぽのおっちゃんは、取ってもじゃんけんに強い。この間のじゃんけんでも、彼が勝っていたけれど。あれは間違いなく後出しじゃんけんだった。コンマ何秒だけれど。間違いなく、オーベルジュさんの方が遅かったからね。

 ああいった勝負強さも、指揮官の強みって事なのかも知れないね。

 かなり物々しい厳戒態勢の中を、ナーラダ村に向けて、二頭立ての馬車と荷馬車が一台、それに急遽用意した、一頭立ての馬車が領都の中を進んで行く。あたしも、お見送りもかねて、昼間の橋の柱を確認に行く。歩いて行こうとしたら、矢っ張りジェシカ・ハウスマンさんに止められた。伯爵令嬢として、簡単に姿を見せてはならないそうで。

 あたしが乗る馬車は一頭立ての黒塗りの馬車だ。実は大した距離でもないし、歩いて行ける距離だから、橋まで歩いて見送りしようとしていたのよね。どのみち、護衛の兵隊さんも徒歩だしね。

 大変申し訳ない。最初から、あたしも馬車で出掛けるつもりに成っていれば良かった。その馬車を用意するために、小一時間くらい遅延させてしまった。

 あたしが黒塗りに小さな馬車から降り立つと、護衛任務を引き受けているオーベルジュ隊の面々が、緊張を顕わにしながら、四方に目を光らせている。因みに、彼らの腰に下げられている、ショートソードは、何時でも抜けるように準備されている。

 それでも、昨夜のように、支援用の弓兵はスタンバっていない。そう言った想定はないんだろうな。


 




  




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