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山猫は月夜に笑う 呪われた双子の悪役令嬢に転生しちゃったよ  作者: あの1号


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書類との格闘 3

 ガセボでの、楽しくもない話し合いは此方の一方的な、意思伝達に終わり。マッキントッシュ卿は、かなり不満があるらしく、ぶつぶつ言っていたけれど。ここへ来て其れは通らない。何より、彼の失点が多すぎる。このまま奥様に報告すれば、其れなりに罰を受けることになるのにね。

 なんなら、援助金を持ち帰ることだって出来ると、脅したら。簡単に頷いてくれた。矢っ張り金かー。

 本当に難儀な叔父さんである。最初から、納得してくれれば、こんなに慌てて動かなくても済んだ。

 実は少し早歩きで、廊下を進んでいる。実は駆足に為たい、流石にドレスを着た状態で、伯爵令嬢が走り回るのは、外聞が悪すぎる。何しろ、あたしはこの子爵家にとっては、大事なお客様だ。

 此所には、使用人達の目だってある。あたしが走れば、その足音だって、この邸内に響き渡ることになる。攻めて、屋敷の中で家ぐらいは、いわゆる御令嬢らしくしていないと、後でジェシカ・ハウスマンさんに叱られる。

 因みに、あたしの後ろを早歩きで、ジェシカ・ハウスマンさんとサリーさんが付いて来ている。二人とも、中々迫力のある歩く姿だった。あたしの所為なのか、はたまたこの二人の迫力がある所為なのか、子爵家の使用人の方々が、仕事を止めて、礼を取ってくれている。

 表玄関を出ると、密猟を為て居た奴の家族と、今回彼らと同道する予定の、レイを始めとして、二個小隊の面々が、あたしの到着を待っていてくれた。目的は、ナーラダ村への公金と、この家族を無事に送ることだ。

 祖母ちゃんが、あたしの姿を見付けると、深々と頭を下げてきた。側に居た、女の子はあたしに笑いかけてくる。あ、祖母ちゃんに頭を小突かれた。

すると、頭をさすりながら、あたしにぺこりと頭を下げてくる。

 こうしてみると、黒い頭の中の金髪碧眼のレイはとても目立つ。種族が違うのだから、その辺りは仕方が無いことだ。私兵団の平均装備は、皮鎧にショートソード。レイは黒い文官服に、ショートソード。

 家族の皆さんは、女はお仕着せのメイド服。男は使用人の格好を為て貰っている。年寄りから子供まで居るけれど、その辺りは居ても不思議がないからね。着替えも持ち出せなかったから、一番簡単に用意できたのが其れだったんだよね。

 小隊長のアップル叔父さんが、和やかにあたしに近付いてくる。軽く敬礼をしてくる物だから、あたしもつられて敬礼を返してしまう。後ろに立っている、ジェシカ・ハウスマンさんが背中を軽く触れてくる。対応ミスを指摘してくる。此所は、浅いコーツイが正解なんだ。

 今のあたしは、マリア・ド・デニム伯爵令嬢なんだから。彼らの上官ではなく。彼らにとっては、護衛対象なのだから。


「其れでは、行って参ります。皆様の安全はお任せ下さい」

「宜しくお願いしますね」


 アップル叔父さんは、和やかに笑いながら、一言。それに対して、あたしは想定されている答えを返す。本当に宜しくお願い為たいのは本音だ。

 レイの方に、視線を向けると、彼は小さく頷いていた。

 実は彼には、いくつかのお願いをしている。村に着いたら、村長の所に行って、あたしが書いた手紙を渡して貰うこと。そして、村の復興状況と、村の衆の様子を見てきて貰うことだ。何でも出来るスーパー執事だから、結構当てに為ている。

 その為に、レイの肩書きは、マリア・ド・デニム伯爵令嬢付きの文官と言うことに成っている。此方でも、彼のたは欲しいけれど。私兵の皆さんに、まるっと押しつけるわけにも行かないからね。





 

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