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山猫は月夜に笑う 呪われた双子の悪役令嬢に転生しちゃったよ  作者: あの1号


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マリア様の言う通り 5

「私としては、皆さんのいる場所でお話ししても宜しいのですが。マッキントッシュ卿は、其れは気が向かないでしょうから、何処かゆっくり出来るところが宜しいでしょうか。そうですね、天気も良いですし。お庭にでも出ましょうか」


 子供の言葉とも思えないほど、彼女の言葉には何処か逆らえない物が感じられて、胃がきりきりと痛くなってきた。この子娘は、余人を置かずに話が為たいと言っている。

 この娘の顔は和やかではあるが。彼女の視線は何処か厳しい物を、感じさせる物があった。まるでこの間お出でに成った、アリス・ド・デニム伯爵夫人を思い出させる。同じ血を引いているのだから、其処は似ていても不思議の無いことだが。大夫噂とは異なるようだ。


「其れでは庭先に設置されてる、ガセボにご案内致しましょう」


 マッキントッシュ卿はそう言いながら、胡乱な表情をさせている、妻に目配せをすると。この小娘に手を差し伸べる。相手は子供とは言えど、子爵位を持つ立派な貴族だ。其れなりに、相手をしなければ、あとで困った事に成るかも知れない。此方は、とんでもない失点を為てしまっているのだから。

 小娘がそっと手を似せてきた。少し汗をかいているのだろうか、其れなりに緊張もしているのだろう。

 廊下に出ると、この子娘の侍女とメイドが待っていた。彼女の専属というわけでも無いが、それでも気性の激しそうな侍女は、赤毛を短く揃え手織り、頬に雀斑が浮いている。彼女は護衛も兼ねているのかも知れない。

 この侍女の隣には、かなり歳の行った女性が立っている。何でも出来るベテランのメイドを寄越したのだろう。他には、かなり多い数の使用人を連れてきたが、何故か殆ど姿を見なかった。


「ジェシカこれから、ガセボでお茶を飲もうと思っているの。持ってきたお茶を振る舞いたいから、用意させて」


 侍女は、マリア・ド・デニム伯爵令嬢の言葉に、膝を少し曲げて答えると。隣に待機している、ベテランのメイドに視線を向ける。メイドは矢張り軽く頷くと。

 マッキントッシュ卿に向けて、膝を追っ手挨拶とすると、踵を返す。殆ど身体を揺らしていないのに、素晴らしい速度で立ち去っていく。あれで、歩いているところが凄い。

 彼の記憶にも、これほど素早く動くメイドを知らない。デニム家の使用人のレベルの高さには舌を巻いてしまう。思えば、本来なら王家の其れなのだから、その辺りは当然のことなのかも知れない。

 彼が今エスコートしている小娘も、蛮族の侵攻さえ無ければ。自分が、エスコートするような身分でも無い。何より、下級貴族が王族の手を取ることなど許されない事だから。

 少し庭先に出るには、時間を要する。何よりこの屋敷の構造上。如何しても、遠回りを為なければならないからだ。自慢の大きな窓から、直接外に出ることは適わない。窓を開けて、外の空気を取り入れるようには出来ていないからだ。

 そう言った機構を作るためには、職人の手を何人も使わなくては成らず。かなりの費用が必要で、計画はしたが断念したのだ。




 


 

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