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山猫は月夜に笑う 呪われた双子の悪役令嬢に転生しちゃったよ  作者: あの1号


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マリア様の言う通り 4

「そのお馬さんは優しいの。だったら、私を乗せてくるれかな」

「今度来るようなことがあったら、連れてくるようにするわね」


 こんなに優しそうな表情をすることもあるんだ。矢張り幼い子供が介在すれば、流石の御令嬢も文句を言っても来なくなる。このまま、時間が過ぎてくれることを、私は祈りたくなる。そして、予定通りに隣の所領に向かって欲しい。

 給仕を任されている、従僕が一声掛けて、今日の食事を持ち込んでくる。最初のメニューはスープになっている。正直昨夜は飲み過ぎたから、あっさり味の物何は有難い。長年厨房を任されている、料理人は判っているようだ。あとで褒めておくことにする。

 食事中は至って、穏当な話しだけに終始した。何より、橋の柱のことは全く言及が無かった。このまま何事も無かったようには行かないだろうが。それでも幼い子供の事だから。上手くするとスルーしてくれるかも知れない。僅かな望みではあるが、此方にとって、間違いなく減点には違いの無いことなのだから。

 当食事はつつがなく終わり。家族の団らんの中にあって、この子娘も良い感じに好意を持ってくれたようにも見える。黙って、次の場所に向かって行ってくれ。その際に、公金を僅かでも多く置いて行ってくれれば尚芳。


「こんなに気持ちの良い御嬢様だとは思いませんでした。噂を鵜呑みにする物ではありませんね」


 妻のエリスが、怖いことを言っている。彼女に悪い噂をこれまで、吹き込みすぎただろうか。へそを曲げられると、其れで無くとも、橋の件ではかなりの失点になっているから。気を付けて貰いたい物だ。


「美味しい食事をありがとう。作ってくれた職人達に、美味しかったとお伝え下さい」


 マリア・ド・デニム伯爵令嬢が、ニコニコと笑って。そんなことを、最期のお茶を入れている、執事に向かって声を掛けている。昨夜の彼女とは打って変わって、ひたすら上機嫌に見える。このまま黙って、次の場所に向かってくれ。

 マッキントッシュ卿は、内心ホッと安堵しながら、齢十三歳の小娘の顔を盗み見る。表情は、白々しくならない程度の笑顔を作っている。背中には、熱くも無いのに汗が噴き出している事を実感していた。橋の処での立ち往生。其れがどのように今後に、影響してくる物なのか、図りかねているのが現状だった。


「マッキントッシュ卿。食事が終わりましたら、お話があります。お時間を作っていただけないでしょうか」


 小娘は決して断れない事を言い出した。これから橋の柱を確認しなければならないのに、面倒なことだ。


「ようやく水堀の水が抜けたところです。これから橋の状態を確認をしに行くところですが」

「既に其れは確認済みですわ。彼の橋の柱には、全ての柱に鋸が入れられておりましたわ。恐らく、私達の重たい馬車が通れば、間違いなく落ちたことでしょう」


 マリア・ド・デニム伯爵令嬢は、和やかに笑ってそんな事を言ってきた。此方が動き出す前に、この娘は橋の状態を確認済みだったと言うことか。其れで、納得が行った。彼女の目元の熊は、殆ど睡眠を取っていなかったと言うことか。

 この時の彼女補表情は、十三歳の娘の其れでは無い。何処か多くの経験を積んだ、やり手の手強い女に見える。


「このお話が終われば、お姉ちゃんとお話ししましょうね」


 ニッコリと、マリア・ド・デニム伯爵令嬢が深く笑いながら、言葉を紡ぐ。その笑顔につられるように、二人の娘が微笑んでいる。どうやら、彼女は娘達のことには好意を持ってくれたらしい。




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