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山猫は月夜に笑う 呪われた双子の悪役令嬢に転生しちゃったよ  作者: あの1号


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マリア様の言う通り 

 アーノルド・マッキントッシュは、遅い朝食を終えて、気の進まない会合へ歩みを進めている。彼の歩む速度は、メイドの其れよりもずっと遅い。内心がその歩みに現れている。

 昨夜の晩餐会で、少しばかり酒を飲み過ぎた。橋に不備があり、一寸したトラブルに見舞われたが、いち早く情報を得たお陰で、伯爵家の令嬢を危険から救うことが出来た。其れは大きな加点では無いだろうか。そうは思う物の、彼女の視線は、攻めるように感じられる。それでも、物の道理の判らない幼い娘の言う事だ。

 こう言った物が判らないような、娘の相手をしなければならないのは、気の滅入ることでしか無かった。

 本音を言えば、サッサと予定通り。他の所領に行ってくれ。あんな訳の解らない小娘の言う事を、聞かなければならないのは、遣りきれない。妻と娘が、良いように相手してくれれば良いのに。自分はこの決して小さくも無い所領を束ねる、立派な大人なのだ。

 其れが、母親から送られた、爵位を持つているからと言って、私に領の政に口を挟んでくる。あのような餓鬼の癖に、大人しく公金を置いて帰れば良いのに。其れこそが、彼の本音だった。

 彼の娘には、以前にも在ったことがある。見た目はアリス・ド・デニム婦人によく似ているが、性格はかなり違っているようにも見えた。殆ど話しをすることも無かったが、噂では誘拐されて傷物に成っていて。令嬢としての価値は殆ど失われてしまい。その心の傷のせいで、公務に出掛ける事も無く。屋敷に引きこもっていると聞いている。

 今回は、彼の誘拐事件以来初めての公務と言う事に成る。其れがマッキントッシュ領とマーゴ領への訪問と言うことに成る。その目的は、水害からの復興の援助金の輸送だ。令嬢の公務としては、違和感の有る物ではあるが。彼の立場としては、とても有りがたい物である。何より金は有るに越したことは無いのだから。

 正直、領民から上がってくる税収だけでは達行かなくなってきていた。何より、治水工事の遅れは致命的で、小麦の収穫量が恐らく半分以下に下がってきてしまっている。最悪、餓死者ですら出かねない状況だ。そう言った状況を踏まえて、アーノルド・マッキントッシュが爵位を賜ることが、中々出来ないでいた。子爵と名乗っているが、いわば代理が後ろに付いている状態だ。

 この間、デニム伯爵家の視察があったときに。その事をご説明したのが功を奏したのかも知れない。今は復興に尽力して、功績を積み上げるときだと、国を売り渡した、彼の女の言葉が耳に残っている。

 食事のための部屋は、この屋敷の南側の部屋に用意されている。この部屋は普段は我が家族と話しをするために、整えられた一番居心地の良い部屋である。何より、高価な大きな窓ガラスから、自慢の庭を眺めることが出来る。庭には、庭師渾身の庭園が設けられており。其れだけでも価値のある場所だ。

 昨夜は、マリア・ド・デニム伯爵令嬢御一行をお迎えするために、大広間を用意して。其処で旅の労を労うための、宴を開いたのだが。彼の娘には過ぎた歓談だったらしく。終始不機嫌な様子だった。未だ十三歳の娘には、この心遣いなど理解できないのだろう。


 



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