なんちゃって探偵 8
ディックとレイナの二人組との話し合いは、深夜に渡って行われた。其れが有意義かどうかは判らないけれど。あたしの行動が決められたことは確かだ。
この領都で、一泊して。次の日には、ナーラダ村に行き。密猟者の家族を、村長に宜しくしてくれるように、お願いする予定だった。其れは一寸難しくなってしまった。
ここ半年間の、マッキントッシュ家の、お金の出入りを洗い出し作業を為なければならなくなったからだ。もしも、彼が今回の陰謀に荷担しているなら。何処かに破綻を見付けることが出来るだろう。若しかすると、帝国のスパイの動きを掴むことが出来るかも知れない。
何よりも、卿が邦を裏切っていたなら。其れこそ大変なことに成るかも知れない。リントンさんの影の人達が、、此所に拠点を作って監視しているのは、此所がかなり重要な場所だからだ。
この先にある、砦はもとより。後詰めとしての重要性は、計り知れない。何より、奥様が結婚する決断をした、彼の戦争によって、この領都ベレタと一本道で繋がっている。港町ビルケを失ってからは、この街も国境に接してしまっているのだから。
影の人との共同捜査は、屋敷の内と外からの調査をすることで決った。彼ら影達に言わせれば、あたしは同輩らしい。あたしはそのお陰で、予定通りの行動が出来なくなった。つまり、連れてきた人達を、ナーラダ村に送ることが難しくなった。
会合場所は、決してお上品な場所では無い。いわば場末の危険地帯だ。こう言った貧民街は、何処にでも有る。個人の収入によって、如何しても生活できる場所は決ってくる。其れなりの働き場所を持たない者には、どんなに努力したところで、貧民はあくまでも貧民としてしか、生きる術が無い。
其れなりの教育を受けていなければ、事の善悪を判断することも出来ずに。少し頭の働く者に、生きる時間を搾取されてしまうのだ。その搾取した時間を使って、大きな収入を得るようになる。其れが、奪う者と奪われる者との差だ。
こういった事は、昔のあたしが生きていた世界でも、結構在った。この世界よりも酷いことに成っているかも知れない。此所では、支配階級の中に、支配する者の矜持とも言える考え方が、神の教えという善政が存在しているのだから。其れでも悪い事を考える人間は、後を絶たないんだけどね。
そして限界が来ると、平民の暴動が起こって、一気に政権が可笑しくなることがある。大概は、武力を持っている支配階級の方が強いんで、制圧されて終わるんだけど。
そう言った隙を、周辺諸国は見逃したりしない。其れを気に国を平定された国の、元王子様があたしの隣に座っている。その事を、あたしは知らない事に成っているから、その辺りについて話させるわけにも行かない。若しかすると、帝国の常套手段なのかも知れないからね。
彼の二人と話している最中に、嫌なことを思い付いてしまった。もしかして、悪役令嬢マリアは鋸を入れた職人と、同じだったんじゃ無いかってね。彼女が王都で起こした、騒ぎに乗じて、奴ら帝国がマルーン邦に攻めてきたんだ。
その時には、王都の中は無政府状態になっていた。当然の事ながら、マルーン邦に援軍を送る余裕なんか無かった。そして、奥様の立てこもっていた、国境を守っている砦が、後方支援を受けられないまま、孤立してしまい。陥落してしまった。




