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山猫は月夜に笑う 呪われた双子の悪役令嬢に転生しちゃったよ  作者: あの1号


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なんちゃって探偵 7

 思わず溜息が漏れる。しんどいし、如何することが正解なのかも判らない。平和な国で育っていたせいか、スパイが横行するような世界観は、極めてノーサンキュウだったりする。

 あたしの目の前にいる二人も、大きな意味でスパイの類いだ。前世で言うなら、公安って言うことに成るのだろう。

 自分から、マリアに関わる事を決めたわけだけれど。あたしは乙女ゲームさくらいろのきみに・・・をちゃぶ台返ししようとしただけで。こんなにどっぷり浸かろうとは思っていなかった。確か恋愛シュミレーションだったはずが、戦略シミュレーションの世界になろうとは思わなかった。

 あたしは気の毒な家族を、ナーラダ村に送れれば良かったんだ。其れが、国を揺るがすような陰謀の真っ只中に、飛び込んでしまうことになろうとは、前世の知識があってもなんの役にも立たないじゃ無いか。責任者に文句の一つも言って遣りたい。

 あたしは、心の中で、明日になったら、神殿に文句を言いに言ってやろうと、強く心に誓うのだった。

 何処かに勇者様は居ませんか。居るんなら、此所に手頃な活躍の場がありますよ。推理力お化けの探偵さんでも可。あたしの隣で、深刻な顔を為ながら頷いてるんじゃ無いよ。あんたの得意分野でしょうが。


「その職人の死因は、病死になるそうなんだ。そう言った症状の毒を特定できない以上。病死で確定になるだろうな」

と、レイが言った。なんともやるせない表情をしていた。


「恐らくそうなるだろう。デニム家がこれに、おおっぴらに介入が出来ないから。俺達もこれ以上は動きようが無い。橋が落ちなかったことで、良しとしなければならないだろう」


 ディックが、判っていることを言う。

 その程度のことは誰でも判る。この世界の知識の中には、あたしが良くドラマの中で、描かれているような実験機器も。知識も存在なんか無いから。その上、さくらいろのきみに・・・の世界には、魔法的な物も無いのだから。有るとすれば、良く在る迷信みたいな眉唾物の伝承だけである。因みに、呪われた双子何て言うのも、その一種だと思う。


「此れって敵の陰謀の可能性が高いよね。この領都ベレタって街は、帝国から見たら、攻めるべき場所の一つなんだよね」


 あんまりこういった事を言うと、リントンさんが喜びそうで怖いんだけど。いくら何でも、そんなに多くスパイを送り込むリソースを持ってないだろうから。重要な急所を攻めてくるだろうし。この間の事件のように、奥様狙いの暗殺者を送り込んでくるように。今回は、マリアなのか領都ベレタ狙いなのか。いわゆるアーノルド・マッキントッシュ卿を寝返らせるための、一手では無いのだろうか。

 もしも、公金を輸送している馬車が、領都ベレタ手前の橋が落ちて、マリアが正史通り死んだなら。奥様はどう思うだろう。悲しむだろうし、怒りを感じるかも知れない。アーノルド・マッキントッシュ卿の責任を追及するかも知れない。代が変わって、彼の奥様に対する感情は判らないけれど。彼の爺ちゃん領主よりは忠誠心は低くなっているだろうから。帝国と通じるかも知れない。若しかすると、既に通じているかも知れない。

 本物のマリアは泳げない。彼の重い服を着たまま、水に落ちればどうなるか想像が付く。

 あたしが、彼の家族をナーラダ村に連れて行きたがったから。元々あった、マッキントッシュ家に対する援助の計画はあったみたいだし。その計画に、あたしのが乗っかっただけだしね。

 その序でに、奥様からはこの辺りの事情の洗い出しを、命じられているんだけどね。こんなに面倒なことに成るとは思わなかった。







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