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山猫は月夜に笑う 呪われた双子の悪役令嬢に転生しちゃったよ  作者: あの1号


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なんちゃって探偵 6

「鋸を入れた人は、既に死んでいるって事だよね」

「自宅で、無くなっていたそうだ。発見したのは、其奴の奥方だった。色々と、他には言えないような事情で、一緒に住んでいなかったらしいから。臭っちまう前に、奥方に見付けて貰って良かった」


 あたしの質問に、ディックの奴が答える。今日は領都よりも、多少ワイルドに見える。無精髭を生やしている所為なのかも知れない。それでも、もててるよね。この人。


「亡くなってから、どれくらい経っているかも判らないの」

「恐らく毒だと思われるんだが。残念ながら、どういった毒が使われたかは、此所の医者には特定できていない。デイロウの医者を連れてきても、たぶん判らないだろうな。判っていることは、少なくともヒ素は使われていないって事だけだ」


 あたしの質問に、ディックが答える。


「これまた、病死って事に成りそうな流れが出来てる。いわゆる突然死だからさ。何となく、フォレ・ド・マッキントッシュ卿の死因に似ている気がするんだよね。似ているからと言って、そうだって言い切れないのが厄介なんだけどさ」


 レイナが天然で綺麗な顔立ちを、酷く歪めて言った。こう言った仕事を為ているから、手が届かないことに苛立っているのかも知れない。もしかして、彼女は正義を信じているのかも知れない。

 あたしは、こう言った立場の人達と触れ合ったことが無かったから、本当に不思議だけど感動していた。何処か物語の中に、入り込んでしまったような、非現実感。実際物語の中なんだけどね。

 でも、あたしが昔のことを思い出してから、随分経っている。昔は、其れこそ酷いことを為て生きていた。それでも、人の生き死にに関わるようなことなんか無かった。今は、其れがまるで日常のようになってしまっている。

 何しろ、殺人事件の話しを、なんの感銘も感じないで話している。其れこそ、犯人を特定するための手がかりについてだ。ドラマの犯人について、話題に為て居るわけでも無く。若しかすると、あたしを狙っている人間が、その為にお気為て事件だ。

 此れは考えようなのだけれど。もしも、マリアが無理して、公務をしていたら。この人達が、橋の仕掛けに気付かなかったら。馬車はこの水堀に落ちたかも知れない。

 マリアは基本的に泳げない。溺れてしまったかも知れない。そうなったら、デニム家は如何するだろう。其れで無くとも、マッキントッシュ家は大夫可笑しくなっているのだから。

 此れって、一寸見過ごせないかも知れない。良っ程大きな目的が無ければ、こんなことをすることなんて無いだろう。あたしの中で、餓鬼の頃遊んでいたシミュレーションゲームのことが思い浮かんでくる。

 其れは、戦争を含めて、他の国を支配していくゲームだ。いかに為て、自分が有利に戦争を運ぶか。その前段階として、その国の支配力を削ぐ。そう言ったゲームだった。スパイに命じて、他国の破壊工作をさせたり。その国の要人を寝返らせたり。

 此れって、其れなんじゃ無いかしら。つい最近も、領都デイロウでスパイをあぶり出ししたばかりだ。若しかすると、この辺りにも連中が動いている可能性がある。

 



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