影の人との会合 9
「此れは俺もざっと読んだんだけど。既に証拠は亡くなっている。奥様に報告は行っていても、奥様が何を考えられているのか、一寸俺には判らないからさ。ただ、リコが此所に来ているって事は、その辺りも含めて、調べろって言っているんじゃないかとも思うんだ」
「……」
「ここへ来るときに、リントンさんからこの服を渡されたとき、リコの手伝いをしろって言われている。リコは、こう言った書類の類いも読めるんだろ。此れって、結構大事に成っていると思うぜ。こう言うことをする奴については、俺は一回経験があるから。小さいうちに対処しておいた方が良いと思う」
レイが自分の今着ている、文官服をつまんで見せながら、そんなことを言ってきた。
「今読ませられた、この書類くらいなら判るよ。此れは読みやすいように、此所の人達が書いてき
くれた物だからな」
「レイは此れが読めるんだ」
「馬鹿にするなよ。こう見えても、俺は結構努力家なんだ」
あたしはレイが、こういった事になれていることを知っている。何よりも、彼は亡国の王子なのだから。王族に対する教育はバッチリ受けているだろうから。
あたしがその事を、知っていることを言うわけには行かない。其れは彼が墓場まで持っていこうとしている秘密だから。確かゲームのエピソードの中で、ヒロインちゃんに言っていた記憶がある。あたしが其れを、知っている理由を説明できないし。いわゆるチートなんだけど、其れを理解できるように話せる自信も無いのよね。
「この書類を読む限り。明らかに、フォレ・ド・マッキントッシュ子爵の死因は毒殺だと思う。この報告書を読む限り。何故彼が死んだのか、その死因を特定することは出来ないだろうな。少なくとも、良く暗殺に使われているヒ素は使用されていないことは判るけど」
あたしは、レイが持ってきた紙の束を、その綺麗な筆跡の文字とは全く異なる。とてもでは無いけれど。お粗末で、呆れ返るほどの現マッキントッシュ卿の動きが書かれていた。
其れまで、領民との飲み会に積極的に出いていた、フォレ・ド・マッキントッシュ卿の行動と、体調を崩したときの詳細が描き込まれていた。そして、その後のマッキントッシュ子爵家の動き。初動の遅れ。
使用人達の総入れ替えに付いても書かれている。それどころか、今私兵となっている者達出すら入れ替えられていた。普通に考えたって、其れまで訓練で育まれていた、戦力をそう簡単に入れ替えることなんか出来ない。経験値は、一朝一夕で得られる物でも無いのだから。
あまりにも動きが可笑しい。そして、此れまで使用人として勤めていた者達の、いわば愚痴だ。マッキントッシュ家の中のことが事細かに書かれている。正直な話し、この内容は読んでて余り気持ちの良い物では無い。
こんな有様では、領都に掛けられた、大事な橋に対して破壊工作を為れていたとしても、気付くことなんか出来ないかも知れない。何だかとっても、気持ちが落ち込んでしまう。このままでは、簡単にこの邦が攻め滅ぼされてしまうかも知れない。
あまりにも、無防備な状態では無いか。この街に対して、謀略のし放題。それどころか、今回なんかは破壊工作だ。勿論、領都デイロウでも、其れは行われているみたいだけど。それにしても、此れでは酷すぎる。




