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山猫は月夜に笑う 呪われた双子の悪役令嬢に転生しちゃったよ  作者: あの1号


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影の人との会合 7

 暖炉の火が暖かい。ぱちぱちと、木がはぜる音。

 この部屋の暖炉は、とても可愛らしい大きさの物で、酷く簡易な物だ。此所は影の人の使う集合住宅の一室。比較的安めに借りることの出来る、安宿の一室だ。因みに、この宿はよく知っている。あたし達もたまに利用する宿だったのよね。

 此所は領都ベレタの中でも、あんまり上品な人種の住んでいるところでは無かった。ぶっちゃけ貧民街よりはましだけど。女が夜一人で歩けるような場所では無い。

 あたしは暖炉の側に立って、冷え切った身体を温めている。流石にこの時間になると、かなり冷えてしまったのだ。取りあえずベットが在る部屋で無くて良かった。テーブルと、椅子が四脚置かれている簡素な部屋だ。何をするための部屋なのか、一寸解らない造りの部屋で、暫く待っていて欲しいと言われて、素直に待つことにした。というよりは、ここら辺りの地理は結構知っていたから。暖かい場所で、話を為ようという提案を聞いたって訳だ。

 安普請な造りの床。薄い壁の向こうからは、聞いてはいけないような男女の交わりの声が聞こえる。道を挟んで、向かい側の建物は。良く父ちゃんと飯を食べに行く、食堂件娼館が立っている。あたしみたいな、小娘を連れてくるような場所じゃ無い。今気付いたんだけど。父ちゃんは何を考えていたんだろう。

 当時から、昔の記憶があったあたしは、こういった所に待たされていても、別にどうって事もなかった。此れが、すで幼い子供だったら、どう思っただろう。一寸頂けないことを、父ちゃんはしていたんだろうな。その辺りのことは判っていたから、男ってどうしようもないんだなと思いながら。あたしの事を面倒見てくれる、お姉さんに相手して貰っていた。

 男がどんな生き物で、どんなに女を愛していたとしても、下半身には、理性が無いことは知っていたしね。特に、母ちゃんが亡くなってからの、父ちゃんの荒れ様は酷かった。

 何時も何処か投げやりにしていて、それでいて底冷えのする視線をあたしに向けてきていた。既に、自分が乙女ゲームさくらいろのきみに・・・の世界に、転生してしまっているって気付いていたから。それから、父ちゃんが、可笑しな事を考えないように、気持ちをほぐすようにしたもんだ。ただ、其れが効き過ぎて、とんでもなく可愛がられるようになったのは誤算だった。

 今の父ちゃんは、激甘親父になってしまっている。そう、もしもあたしのお尻に触れるような不届き者が居れば、その手がぽっきり折れる未来しか無い。あたしの事をお嫁さんに為たい男が出て来たとして、其奴が気に入らなければ。其れこそ、途轍もなく馬鹿高い壁になるだろう。……壁だったら良いのだけれど。ぶった切りかねないのよね。

 たぶん、父ちゃん自身が屑だったから、他の男が皆自分と同じ屑に見えているんだろう。そんな屑どもに、あたしの事を触らせることに耐えられないんだそうだ。だから、折っちゃう。大事なところを潰さないだけましなのかも知れないね。

 今、あたしは一人でこの部屋で待たされている。何故レイとは引き離されてしまった。レイナって名乗った女に、無理遣り何処かへ連れ出されてしまった。言い直そう。お向かいの娼館の一室に今はいる。プロの女とは、男を上手く引きずり込むのに長けている。隠れ攻略キャラそんなことで如何すると、あたしは大きな声で言いたい。彼のレイですら、いけない遊びに連れ込まれるんだから。彼の香水の効力は怖いなって思う。

 昨期まで着ていたズボンは、この部屋に入る前に、洗濯するって言われてぬがされてしまい。今は、ごく有り触れた女物のワンピースを着込んでいる。何処で要した物なのか、一寸気になる物ではあるけれど。貸してくれるなら、其れを断ることも無いからね。



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