使用人とお嬢様 4
ナーラダ村の同世代の子達には、今まで負けたことがない。上の世代の達との喧嘩でも、結局泣かせて終わる。あたしは勝つまでやるから、負け知らずなのであるけれど。最近はガキ大将みたいになってはいた。一声掛ければ、村の少しやんちゃな連中が集まってくる。こう見えて結構好かれているのである。
貴族のご令嬢との付き合い方は、平民のあたしには難しすぎる。しかも、敬語を駆使し話すなんて、頭が過熱してくる。勘弁して欲しい。
「貴方は怪物ではなかったみたいですね。改めて、お礼を言わなければ行けないかしら」
マリア・ド・デニム伯爵令嬢が、天蓋付のベットから起き出して、あたしを見詰めた。瞳はまだ涙で潤んでいる。
「別に良いよ。ちゃんと報奨金は頂いたから」
「其れと此れとは別でしょう」
彼女は天蓋から外に出てくると、あたしに軽く頭を下げた。此れはレアものを目撃してしまった。貴族が平民に対してお礼を言うなんて事は、まずあり得ない事なのだ。報奨金でお礼に代えることはあるけれど、頭を下げるなんて事はあり得ないことなので。この子は貴族にしては、真面なのかな。騙されているかも知れないけれど、死なせないで置いて良かったかも知れない。
ならば、あたしに協力してくれるように説得するのも良いかな。このままストーリーが進めば、この国は地上からなくなってしまうのだから。そして、貴方の母親はこの領地を蹂躙する敵軍の群れに押しつぶされる。
あたしはスチルを見ている、その時の奥様の凜々しい姿は忘れられない。まるで、戯曲の中で語られている、女将軍の最後を見ているようで印象的だった。
敵の数は3万5千その、武装集団に対して、援軍を要請してはいても、決して送られてこないことを知りながら、屋敷の楼閣の上で、敵軍に対して弓を構えていた。
それ以降彼女は、ゲームのストーリーには登場してこない。恐らくはそう言うことなのだろうと、あたしは思っている。
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