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山猫は月夜に笑う 呪われた双子の悪役令嬢に転生しちゃったよ  作者: あの1号


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脳天気な晩餐 23

 真っ白に洗濯された、テーブルクロスを設えたテーブルの中央には、春の花が飾られている。少しでも、食卓が楽しくなるように、この晩餐の担当者の心遣いだ。

 私の向かい側には、アーノルド・マッキントッシュ卿が、子供に対するように、微笑みを絶やさないようにして眺めている。ま、子供には違いないしね。

 彼の立場と、今の状況を考えるとき。子供の私に、好印象を持たせて、奥様への報告が、穏便な物にしたいと考えているのだろう。その辺り頑張っているんだね。何しろ、今回の橋の件は、卿の瑕疵となる可能性がある。

 私の報告次第だけれど。卿に対する評価が下がるからね。

 給仕係のメイドさんが、私の前に前菜として、春野菜のおひたしをのせた、銀の皿をコトリと音を立てて置いて行く。別のメイドさんが、銀製のコップには水が入れられている。因みにその銀製品は、色が変わったりしていない。少なくとも、ヒ素が使われていないことが解る。


「マリア様」


 私の隣に座っている、ジェシカ・ハウスマンさんが小さく囁く。この食事は既に毒味が完了している声音だ。既に、この口調を四回経験している。ここまで来る間に、マリアとして食事を村長と食べているから。流石に、毒入りの声は聞いたことはない。聞いたら終わりだしね。

 熟々、貴族の生活はしんどい物だと思う。口に入れる物に関して、こんなにも神経質に為なければならないのだから。乙女ゲームさくらいろのきみに・・・では、こんな事描かれていなかった。えげつないストーリーではある。しかし、他人の悪意に怯えるようなことはなかった。所詮はゲームの中の出来事で、上手く行かなければリセットすれば、セーブ為てあるところへ戻ってやり直しが出来る。

 若しかすると、此れってセーブポイントへ戻ってのやり直しなのかも知れないけれど。あたしはナーラダのリコに転生したわけで、ある意味チート持ちなのよね。ある程度先のことが解っているって、大変なアドバンテージだからさ。でも、判っていることはゲームさくらいろのきみに・・・で描かれていることだけ。

 でも、こういった事までは判らない。此れまでだって、いわば普通の村娘として、生活していたから。普段の生活に、色々不便は感じてはいたけれど。少なくとも、毒の心配はしなくても済んだ。

 今はそう言う危険も考慮に入れなければならない。なんちゃってマリアのお仕事は、結構ハードで危険なんだ。こう言った仕事の内容を考えると、メイドの給金に毛の生えたような物では、一寸割に合わないかも知れない。

 それでも、普通に毒味役を用意している辺り。あたしに死なれたくはないと思っているんだろうか。危険度は、そんなに高くは無いだろうけれどもね。

 ようやく跡取りとなれた、今の立場を確かな物にするためには、私に何かあったら。其れこそ事だから。

 其れでなくとも、今回の橋の件は困った事に成るからね。管理責任は、このアーノルド・マッキントッシュ卿に有る。其れも、堀の水が抜けなければ、事実を知ること何て出来ないし。其れも、可能な限り早く知りたい。

 リントンさんの影の人達との、繋ぎを取っておきたいしね。流石に、子爵の御屋敷に、忍び込むのは憚られたらしく。橋で待ち合わせって言うのは、少し危ないかなって感じがするけれど。此方も、誰か護衛を付けるように言ってきてもいるし。大丈夫かなって思うのよ。

 何しろ、彼のお手紙には、リントンさんの常套句が書き込まれていたしね。あれを知っているのは、森の中で怪物くんに遭遇した、影の人しか知らないことだから。信じても良い気がする。



 

 

 


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