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山猫は月夜に笑う 呪われた双子の悪役令嬢に転生しちゃったよ  作者: あの1号


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脳天気な晩餐 14

「サリーです。お手紙を預かって参りました」


 あたしが立ち上がろうとするのを征して、ジェシカ・ハウスマンさんが扉に向かい。扉を内側に引く。


「早かったわね。あの方達の様子はいかがかしら」


 ジェシカ・ハウスマンさんは、優雅に一歩下がると、軽く膝を曲げてみせる。扉の向こうには、ベテランメイドのサリーさんが、メイドとしての決まり事のように、少し深く膝を曲げて挨拶に代える。間違いの無い対応なんだろうか。

 あたしも座っているわけにも行かなくて、椅子から立ち上がり。其れなりには礼を為てみせる。こういう時に、どう振る舞うことが正解なんだろう。その辺り探り探りでしか、付き合っていくことが出来ない。

 何しろあたしは、このメンツの中では一番下なんだよね。だって、ジェシカ・ハウスマンさんは男爵家の娘さんで、サリーさんは結構なベテランのメイドさんなんだ。此所には、あたし達しか居ないから、なんちゃってマリアではなく、見習いメイドのナーラダのリコでしか無いんだよね。

 部屋に入ってきた、サリーさんの視線が、あたしとジェシカ・ハウスマンさんに向かう。少し微笑みを浮かべながら、本当にお手本通りにコーツイを為て見せて、あたしにくすんだ色合いの紙を、秘密のポケットから取り出した。

 その紙は、四つ折りに、折りたたまれており。旅立つ前に、リントンさんに見せられた、影の文様が刻まれた封蝋で閉じられている。開けられた形跡は見られないから、要らない覗き見はしていないんだろうな。良かったな。

 リントンさんの影の人達は、結構怖い人達だから。一般の人達が、知っては不味い事だってあるだろうしね。この、アプローチの仕方は、一寸頂けない。あとでリントンさんに文句を言ってやろうかな。あの人は、何故かあたしの言うことを利いてくれるのよね。まるで、あたしの事をお姫様扱いだから。きっと利いてくれるに違いないわ。


「あの方達は、お金を渡されて、此れを受け取ったようです。封蝋がデニム家の紋様に良く似ておりましたので、一応持って参りました。宛先は、マリア様宛のようです。ハウスマン様いかが致しましょうか」

と、サリーさんがジェシカ・ハウスマンさんにお伺いを立てている。

 一応此所で、一番偉いのはジェシカ・ハウスマンさんだから当然なのだけれど。宛先が、あたしならこっちに持ってくるのが当然でしょ。そうは思うけれど、此所で一番位の高いのは、侍女のジェシカ・ハウスマンさんなんだよね。

 何しろ、あたしがメイドになったときに、メイド長にいの一番に言われたのが、当家の人に対する話し語った。基本的には、当家の方達に対して、直接話しかける事はない。間には、侍女を通すように井原ている。

 ただ、あたしとマリアの関係からすると、その辺りどうでも良くなってしまっている。何しろ、初めての出会いが、あんなだったしね。今更取り繕うことなんか出来ないだろうさ。


「当然読むよ。あたし宛なんだろう」

「リントン様の手の者のようですね。後で叱っておきましょう」


 さらっと、ジェシカ・ハウスマンさんが呟く。一寸目が怖い。事情はこの人も知っているって事か。このお家の侍女さんって、皆怖い人ばっかり。良く悪役令嬢マリアの奴は、騙し仰せたと思う。







 

 



  

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