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山猫は月夜に笑う 呪われた双子の悪役令嬢に転生しちゃったよ  作者: あの1号


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脳天気な晩餐 13

 この御屋敷の人間の、視線がないことを確認すると、ようやくあたしは肩の力を抜いた。元々、良い育ちでないあたしは、伯爵令嬢みたいな振る舞いはしんどい。

 あたしと同じように育てられている、悪役令嬢マリアの奴は良く嘘を突き通せたと思う。何しろ、ごく短時間、なんちゃってマリアをしていても、こんなに疲れるのだから。其れが毎日、二十四時間マリアのように過ごすなんて、苦痛でしかない。


「ハウスマンさん少し休んでいても良いよね」


 駄目でも休むから、この言葉は意味ないんだけれど。それでもね。言っておけば其れなりに気を遣った事になると思うし。

 あたしは言葉を吐くと同時に、テーブルとセットになっている、四脚の椅子の一つに、大股開きで腰を下ろす。旅装で比較的楽なドレスではあるけれど。あたしには結構重たいドレスだ。殆ど馬車の旅だから、ほぼ動かないで済む分。傍目には楽しているように見えるだろうけれど。

 あたしみたいな女には、こう言う格好で、サスペンションの付いていない馬車の旅は苦痛そのものだ。あたし達の荷馬車での移動が、ずっと楽なのもあるからね。だって、あたし達の荷馬車にはサスペンションが付いているし。あれに乗るなら、こんな重たいドレスなんて着込まなくても済むしね。

 機会があったら、サスペンションを取り付けることを言ってみようかな。最近の奥様は、結構気軽にあたしに話しかけてくるようになったから。実行して貰うと、ずっと馬車の旅が楽になると思うんだ。

 だからと言って、何処かのラノベみたいに、あたしにお金が入る事なんてないだろうけどね。何しろ、そういった事に関する法律なんか無いみたいだから。パクリし放題の世界だからな。

 自分で作って、売り出すならいざ知らず。其れでどうにかなるもんでも無いんだよね。そう言った法律でもあれば、若しかするともう少し進んだ世の中になっているかも知れないね。だから、そう言った優れた技術を生み出せる人は、いわゆるお金を持っている貴族なんかに、支援されることで技術の針を進めるようになる。

 あたしにはその辺り無理だ。権力も金も無いから。精々困った事が有れば、それに対応する物を思い出すだけになる。問題なのは、此所には電気が存在しないし。欲しい物を言い出したら、どれも始めから作り出さなければならない物ばかりだ。

 因みに、あたしのアイデアで、上手く言った物はサスペンションと強弓。其れと、マーシャの所にプレゼントした。子供用の椅子くらいかな。あれは上手く出来たと思う。できは良かったと思うけど、いわゆる宣伝が上手く出来なかったから、そんなに注文が入っては居ないみたい。

 少し腰が痛いし、方もこっている気がする。全身の筋無くを上手く動かせるように、のびをしながら、あきれ顔であたしを見ているジェシカ・ハウスマンさんを眺める。この部屋は装飾過多ではあるし、テーブルの上には可愛らしいお花が花瓶に飾られている。春なんだなって感じが為て、割と過ごしやすいように気を遣われている。


「ハウスマンさんも座りませんか。何だったら、私がお茶を入れましょうか」


 あたしとしては、結構気を利かせたつもりで、部屋の隅に置かれたワゴンの上に置かれた、ティーセットの視線を向ける。銀製のポットに四っのカップが置かれている。ワゴンの下の段には、皿に載せられたクッキーが載せられている。

 なにげに、あたしは平民でのメイドでもあるから。本来は、ジェシカ・ハウスマンさんに命令される立場なんだよね。なんか変な気分に成りながら、立ち上がろうとしたときに、扉をノックする音が鳴った。お迎えが来るのには、少し早すぎないか。



 

 


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