使用人とお嬢様 2
お嬢様にあてがわれたベットは、天蓋付の良いベットだと思う。あたしがいつも寝ている麦藁の寝床と比べれば、相当良い待遇だと思う。少なくとも、寝ていてちくちくしないだけで、寝心地は最高だろう。綿の入れてある布団に寝られるだけで、贅沢だと思う。どこまで良い寝床に寝ていやがるんだ。
あたしは心の中の呟きをおくびにも出さないで、ドリーさんの笑顔をまねる。前世で言うところの、営業スマイルって奴だ。あの人もいつも猫を被りまくっているんだろうな。此れからあたしも、この笑顔を貼り付けるようになるのかと思うと、やりきれない気分になる。
「結構良い寝具だと思いますが。ふかふかだしちゃんと日に当てられて居るみたいですよ」
うーん。御貴族様と話すって難しい。此れでも気を付けているのだけれど、うかうかしてるとあたしの地が出てきちまいそうだ。所詮平民育ちには違いないのよ。賢者様に教えて貰った、言い回しも何だか怪しいのかも知れない。
「私はお嬢様をどうにかしようとは、思っては降りません。でなければ、誘拐されたお嬢様を助けたりはしませんよ」
「お母様は、貴方を信用するように仰いましたけれど、顔が似ているだけで、貴方を味方だなんて考えられないですわ」
あたしは、意外にこの子は正直なのかも知れないと思った。それだけでも、年相応に良い子なのかも知れない。実際、姉妹なのだから、嫌いには慣れないかな。だからといって、お互いに信頼することもできないって言う感じかな。契約書には、彼のじょをを守る盾になるように書いてあった。其処には、姉妹を臭わせるようなことは一文も入っていない。
あたしは出来るだけ、この世間知らずの妹を助けてやろうかとは思っている。そうしないと、悪役令嬢の役回りを押しつけた、意味がなくなるかも知れないし。
この国に迫ってきている危機を、回避できなさそうだ。あたしは、やっぱり知り合いが悲惨な目に遭うことが解っているのに、其れをそのまんまにしてはおけない。解っているのなら、其れが起こらないようにすることが出来る。
このままだと、マリア・ド・デニム伯爵令嬢は立派な悪役令嬢になって。国を傾けることになりそうである。そうなったら、どれだけの人が死ぬか解らないのだから。
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