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山猫は月夜に笑う 呪われた双子の悪役令嬢に転生しちゃったよ  作者: あの1号


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脳天気な晩餐 5

 そう言えば、半年前まではお爺ちゃんが領主様だった気がするのだけれど。何しろ、バリバリの田舎娘の庶民そのものだったから。このベレタの領主様なんて、其れこそお祭りの時に一寸だけ、顔を見せた御領主様を見る程度だったからね。

 あたしがデニム家に雇われて、メイド見習いを為て居る内に、代替わりしてしまったって事かな。今でもメイド見習いなんだけどさ。彼のお爺ちゃんは、結構街の衆に好かれていたんだよね。何より、お祭り好きのお爺ちゃんだったから。良く街の衆とは、一緒になって騒いでいたらしいし。何より、小麦製品の価格が安かった。

 そう言えば彼のお爺ちゃんもマッキントッシュ子爵だったはずだよね。其れって、彼のお爺ちゃんは亡くなったって事なのかな。ここへ来る前に、リントンさんに渡された、資料に目を通すのを忘れていたわ。

 彼の資料の分厚さに負けたのよね。何でもここ十年間のベレタ周辺の村落の、動向を纏めた資料ですって。馬車の揺れの中で、あんな細かい文字の羅列なんか見ていられない。読んでいるうちに気持ち悪くなっちゃったのよね。

 サリーさんは何時ものようでも無いし。ジェシカ・ハウスマンさんの視線はいたいし。とてもじゃないけど、居たたまれなかった。

 あたしの目の前を、オーベルジュ小隊の兵隊さん達が、かなりの数の小袋を両手にぶら下げて、向かいに来た馬車に放り込んでいる。かなり雑ではあるけれど。その辺りは仕方が無いことだろう。中身はお金だけど、貨幣だから雑に扱っても、大した事には成らないからね。

 この子袋の中身は、大金貨が詰め込まれている。かなりの重量になる物なんだ。マルーンで使われている、金貨の類いは銅と金の合金になるんだけれど。結構重たい物に成る。其れを、わずか五人の兵隊さんが運んでいるからね。

 何より直近の警備に他の兵隊さんは、手が放せなくなっているからさ。だから、あたしが手伝おうかと思ったのだけれど。止められちゃったからな。こうして、眺めているしか遣りようが無くなってしまった。

 橋を渡ることは出来るけれど。そこから先に行くには、あたしは徒歩でって訳にもいかないらしくて、マッキントッシュ卿が用意してくれた、可愛らしい馬車に乗り込み、御屋敷まで向かうことに成る。なんと言って良いのか、結構面倒くさい。歩けば、一時間も掛からない距離を、態々馬車に揺られていかなければならない。

 正直、歩いた方が速くない。何だったら、走ればもっと早く着いてしまうと思うんだけど。貴族令嬢が、衆人環視の中を走るなんて、はしたない事を為てはいけませんだってさ。

 その辺りは、ドリーさんにも言われているんだけど。何だか面倒いことだなって思う。でもさぁ、確か奥様だって、若い頃はあのサーコートを羽織って、街中を走り回っていたらしいのに、なんか複雑。

 因みに、あたし達をお迎えに来たマッキントッシュ卿と、愉快な私兵さん達は、集まってきた街の衆が、あたし達の邪魔をしないように、いわゆる警備員の役割をしてくれている。ただ、気になるのは一瞬だけど、マッキントッシュ卿の表情が、結構悪い物に成ったことくらいかな。



 





 


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