表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
山猫は月夜に笑う 呪われた双子の悪役令嬢に転生しちゃったよ  作者: あの1号


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1044/1216

影の人 3

 この建物には、地下室が存在している。食い物屋を遣っているから、そう言った施設があって当然なんだけれど。食材を置いておく小さな部屋と。その奥に、簡単には気付かれにくい細工を施した、扉が在り。その扉を開くと、簡易な寝床と机が用意された部屋が在る。

 正直長居したいような部屋では無い。湿気も在り、真面な暖房なんかは期待できない。今はレイラが持っている、ランプの灯りだけが唯一お互いの顔を照らしている。因みにこのランプに使われている油は、最高級の油が使われている。そのお陰で、其れほど悪臭に悩まされないですむ。

 此所は万が一の時のための、待避場所だ。この部屋の先には、ひときわ狭い通路が続いている。使ったことは無いが、確か裏庭の一郭に出口が設置されているはずだ。

 レイラが持っているランプを、小さな台の上に置いた。大きさ的には、ランプ専用としか言いようが無い物だ。


「私は此所嫌いなんだ。何しろ、此所には色んな人間の嫌なことが堪っているようでさ」


 レイラがそんなことを呟くと、あられも無い格好のまま。恐ろしく無防備に、寝台の上に腰を下ろす。此れが一緒に夢を語り合った仲の、幼なじみの姿とも思えなかった。いい女には違いない。たぶん何も知らなければ、振り返り惚れ惚れするほどのいい女である。

 実際この部屋は、たまに拷問部屋になったりする場所だ。こう言った会合には、不向きな場所と言える。何しろ気が滅入る場所だからだ。湿気も凄く、居心地は最悪と言えた。

 ただ、此所なら話し声を聞かれる心配も無い。余計なことに煩わされることも無い。情報の交換だけなら、此所で十分用は足りる。


「ねーぇ。今からでも遅くないからさ。上の部屋を使わない。周りの部屋は、色々お楽しみだからさ。聞き耳を立てる暇なんてあるわけ無いから良くない」

「情報のすりあわせに、其れほど必要とも思えない。大して、時間もかから無いからな」


 ディックはなんと言って良いのか判らない気分で、この領都ベレタの仲間の提案をはねつける。隣に立っている、今回の仕事の相棒は、少し気持ちが動いた顔を為ている。

 正直、ディックの心も少しばかり心が動かされた。それでも、餓鬼の頃から一緒に育った、其れこそ机を並べ学び、将来の夢を語り合った仲なのだ。其れが、仕事のためとはいえ。これほど変わってしまっているとは思いもしなかった。

 レイラの提案は、二人共に寝ながらお話ししようと言っている。上に行くと言うことは、此所ではそう言う事になる。彼女は二対一でも良いよと言っているわけだ。


「そんな暇は無い。恐らく、姫様は今夜にも動くだろう。あの人は、そう言う人だ」

「えー。良いとこのお姫様が、そんな事するかなぁ」

「マリア・ド・デニム伯爵令嬢なら、御屋敷を抜け出すような、馬鹿な事するわけが無いだろうさ。其れが、アリス様なら自分で動かれるそうだ。だから、ナーラダのリコなら確認しに、水位が下がった頃を見計らって、出て来るだろうさ。其れも、短弓を携えてな」

 彼の主人、リントンの言葉を思い出す。何かあれば、何事も自分で見聞きしに動く。ウッカリすると、護衛も付けないで動き回るじゃじゃ馬が、リントンの大事なお姫様だ。

「此方も、もう少し穏便なことになるように、手紙をメイドに渡しておいた。どちらにしても、出て来ることは確定だと思う」

 スケベな視線を、レイラの肌に這わせていた相棒が、そんなことを言ってきた。

 彼の柱に仕掛けられた、細工は日が昇れば明らかになる物だ。其れを遣った犯人については、此方も捜査中で、未だに見付けられてはいない。若しかすると、既にこの街から離れてしまっているのかも知れないと、ディックは考えていた。何より、自分なら既に此所には居ないだろうから。



 



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ