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山猫は月夜に笑う 呪われた双子の悪役令嬢に転生しちゃったよ  作者: あの1号


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一寸したトラブル 7

「マリア様。堀の水を抜かなければ、橋の状態を把握できません。ただいま水門を開いておりますので、今暫くお待ちいただけないでしょうか」

と、マッキントッシュ子爵が頭を下げながら、言葉を返してくる。


「どれくらい掛かるのかしら」

「柱の根元まで見えるようにするためには、恐らくは四時間は掛かると思われます。もし宜しければ、皆様方には、迎えの馬車を用意致しますので、それに乗り換えて、屋敷まで向かっていただければ宜しいかと」

「確かに暗くなってしまいますね。その間こうして待っているわけにも行かないのでしょうね」


 申し訳なさそうにしている、マッキントッシュ子爵の顔を眺めながら。あたしは腕を組み考え込む。この仕草は、令嬢としてはどうよって感じだろうけれど。そのあたりは勘弁して貰いたい。実際、側に立っているジェシカ・ハウスマンさんから、結構な圧が送られている気がする。

 こう言う何か、良い提案でもあるんなら、あたしに言って欲しいくらいだ。あたしが決めれば、あとで何か言ってくるに違いないのだから。

 なんちゃってマリアの辛いと頃よね。何しろ、あたしには権限なんて言う物が、まるっと無いのだから。それでいて、あたしに何か提案することの出来る人間も側にいない。事情を知っている、リントンさんは此所に居ないしね。


「ねぇ。ジェシカどうしたら良いと思う」


 彼女にも、一枚かんで貰うことにする。一応男爵家の娘である、ジェシカ・ハウスマンさんは、庶民のメイドよりは良い立場だと思うのよ。権力は何一つ持っていないけれどもね。

 其れと、あたしの側で水面を見詰めている、レイも確り考えてくれないかな。あんたは、元王子様だろうに。亡国の王子様なんて、素敵設定だけれども、側に突っ立っているだけ何て、絵にならないと思うよ。

 夕暮れの橋の上で、途方に暮れている姿ではあるけれど。見ようによっては、結構見られる絵姿には成るのか。何しろ、あたしとレイは結構な、美形設定だったはずだから。


「此所で、出来ることといったら。そう多くは無いと思われます。このままこうしては居られない事は、判りきっていると思われます。ですので、見張りを置いて、街の中に入る以外に選択肢はないと思われますが。その際に、荷物を持っていくか、そのままにしておくのかご判断をお願い致します」


 概ねあたしが考えていたことを言ってくれた。此れであたしが、勝手に何か決めたことには成らないだろう。もっとも、こんな小さな事も自分で決められないなんて、何て思われたくも無いのだけれど。その辺り、一寸難しいと頃よね。

 あんまり、あたしが出しゃばると、何となくではあるけれど。リントンさんの思うつぼに成っていくような気がするのよね。どうやら、彼は何としても、双子の片割れとして、デニム家に取り込みたく思っているみたいだからね。

 奥様なんかも、此れまでの態度を見ている限りでは、娘を助けただけの平民では無く。生きていた双子の片割れだと思いだしているみたいだし。父ちゃんはなにも言っていないみたいだから、確信は無いみたいだけれど。

 何より、あたしは父ちゃんと母ちゃんの子供だとしか言われていない。昔の記憶があるから、捨てられた双子の片割れだって知っているだけだしね。その辺り、知らない振りするのも大変なんだからね。







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