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山猫は月夜に笑う 呪われた双子の悪役令嬢に転生しちゃったよ  作者: あの1号


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御領主様との邂逅 9

 マッキントッシュ子爵ご一行様を含めた、結構な集団と成ったあたし達は予定通りに、マッキントッシュ家の領都ベレタに到着する。街の規模としては、街と言って良いだろう。其れなりに堅固な城壁に囲まれた、森の中にぽつんとある城壁都市と言える。

 マッキントッシュ家のお屋敷はこの街の中にあって、住民との距離はデニム家の其れより近しい物に成っている。それでも、御屋敷の周りには、これまた確りして堀と城壁に囲まれた、立派な御屋敷が、街の入り口に立っていても、視界の納めることができた。其れだけでかい御屋敷だって事なんだけどね。

 街に入るには、運河から水を引いた水堀を超えなければならない。しかも水堀に掛けられた、橋はあたしが乗ってきた馬車の幅しか無くて。よほど慎重に向かわなければ、街の中に入ることはできない。

 あたしが前に、父ちゃんと来た時は、荷馬車だったんで、其れほど気を遣わなくても渡れたんだけど。今回はそうはいきそうにも無い。何しろ、馬車は四頭立てのデカい馬車だからね。

 隊の前方から、聞き慣れたアップル叔父さんの命令を出す声が聞こえてくる。ゆっくり前進して、穏便な形で街に入りたいけれど。街の衆が見物に出て来て、中々進めそうに無い。

 こんな時は、マッキントッシュ子爵の私兵の仕事だろう。何のために雇っているのか判らないよね。木賃と交通整理を為て貰いたいもんだ。そう言えば此所の私兵団の総数は、二十人弱しか居なかったっけ。あたしの事をお迎えに来たのが、一個小隊だったから。手が回らなくても仕方が無いのかも知れない。

 馬車の戸を叩く音が聞こえる。サリーさんが、馬車の扉の掛けがねを外す。

 あたしが座って売る席は、馬車の奥の席になっている。窓から外を眺めることはできるけど、こちら側の扉には影が掛けられているから、そう簡単には開けることができないようになっている。

 街の中に入る前に、馬車の窓の木戸を閉じることになっているから、街を眺めることは一寸できないかな。何しろ、デニム家の馬車にはガラス窓が付いていない。ガラスって結構高価な代物だから、中々付けられないんだよね。因みに、デイモン・デニム伯爵専用の馬車には、立派なガラス窓が付いていたな。

 其れだけでも、あの人が結構な金食い虫だってのが判る。だからと言って、奥様に付けられた、軛には違いないんだよね。奥様は彼の男の事を、決して愛しては居ないのに。こう言ったやりたい放題を容認している。あたしには理解できないことだ。

 あたしなら、グーで殴っていると思う。立場が違う所為なんだろうけれど。奥様も大変なんだなって、少しだけ同情してしまうな。実際、こんな穀潰しなんか要らないと思う。此れを言うと、マリアに泣かれてしまう。あんなんでも、彼奴の父親には違いないから。あたしは嫌だなって思っているけどね。

 ぎぃっていう音を立てて、扉が開く。其処には金髪碧眼のイケメンが立っていた。文官の出で立ちをしているレイだ。普通の文官なら、丸腰でも違和感が無いのだけれど。彼は腰にショートソードを提げていた。


「マリア様。どうやら橋桁が壊れてしまっているようで、応急修理には時間が掛かるようです。いかが致しましょうか」


 うわぁ。この車列の中で、一番権限の強い人間は、伯爵令嬢って事に成るから、あたしに聞かなければならないわよね。此奴は、きっとアップル叔父さんに、聞いてくるように言われたんだろうな。

 何とか応えないといけないよね。どうしようか。





 

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