復旧工事です。 4
何故かあたしは、村長さんの屋敷の一角にいる。ちなみに隣の部屋にはマリア・ド・デニム伯爵令嬢が部屋を確保している。いわゆる客間の使用人用の小さな部屋である。前世の基準で言えば、三畳間にベットが置かれている。はっきり言って寝るだけの部屋である。ちなみにあたしは、彼女の専属メイドになった覚えは無いので、何故この部屋に押し込められたのか解らない。この部屋ならドリーさんが泊るのが良いのではないだろうか。他にもプロのメイドさんが、四人も居るはずなのに。
あたしは村長さんの処へは、何度もバイトの書類仕事のために通っていたけれども。客室の隣に、こんな秘密の空間が用意されているとは知らなかった。何しろ一見では、客室への扉は解らないように細工されている。此れって使い道は結構色々あるのかも知れない。ある意味怖いことなんじゃ無かろうか。
此れって貴族にとっては、常識の範疇に入っているのかな。前世を含めても、貴族の生活をしたことが無いので、あたしには怖くて居られない。だって、村長さんの家ですらこんな空間が用意されてるなんて、御貴族様の屋敷はどんな物なんだろう。プライバシーなんてあってないような物になって居るのかも知れない。使用人は主人の秘密を完全に握って居るって言うことで、簡単には転職できないんじゃ無いかな。
もしかして、マリア・ド・デニム伯爵令嬢はあたしの事、信用してくれているのかな。もしかすると奥様の意向なのかも知れないけれど。それでも歳は近いし、おんなのこどうしだから仲良くなれるかも知れないと、期待してくれているのかも知れない。
あたしは彼女の、護衛的存在みたいだから、仲良くならなければ仕事には成らないだろうし。実感無いけど、双子の姉妹なのだし良い関係にならなければ、今後が辛くなるかも知れないしね。奥様は仲良くなってくれることを望んで居るみたいだし。気が重いけどせめて友達には成らないと、フラグをふむことも出来ない。
あたしは思うの、双子の姉妹だからって、出会ってすぐ仲良くなんて慣れない。時間を掛けてお互いに相手を知らなければ行けない。其れは恋愛も友情も同じような気がする。
あたしにとっては、今隣で窓の外を眺めながら、童謡を口ずさんでいる彼女より、教会に安置されている、ニックの方が近しい感じがしている。あいつは碌でなしだったけれど、あたしのことを気にしてはくれていた。だから、嫌いじゃ無かったのよね。
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