表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
山猫は月夜に笑う 呪われた双子の悪役令嬢に転生しちゃったよ  作者: あの1号


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1009/1217

奥様からの提案 2

 アリス・ド・デニム伯爵夫人は、目の前の娘に対して、会心の笑顔を向けて言葉を紡ぐ。元々この催しは、弟に自分のもう一人の娘を紹介する事が主な目的だった。そう、始めから嘘が紛れ込んでいたのである。

 だいたい、自分の弟は良くマリアと遊んでくれていた。当然のことながら、ナーラダのリコに気付かないはずが無いのである。例えそっくりとは言え、マリアとナーラダのリコの間には、決定的な違いがある。服を着ていると判りにくいとはいえ、肉付きが決定的に違うのだから。

 実際手紙で、マリアの振りをしたナーラダのリコを連れて行くと告げているのだから。最初から試験にすら成らないことだ。それでも、マリアとふれあうことの少なかった、使用人達の反応は上々で、彼女は思惑通りに物事が進んでいる事に満足の笑みを浮かべてしまう。

 彼の頭の固い、弟をどう説得するか、其れだけは気がかりではあるけれど。彼女には勝算があった。昔から、なんだかんだ言いながら、この弟は話しを判ってくれていたから。其れを当てにしてしまう、アリス・ド・デニム伯爵夫人であった。

 こうして、ナーラダのリコを最も頼みにしている、血の繋がった弟に紹介することが出来た。孰れ彼も自分の姪の存在を受け入れてくれるだろう。そうなれば、少しずつでも、ナーラダのリコを取り込んで、本当に母親と呼ばれるようになりたい。

 奥様呼びではなく。母と呼ばれるようになりたいのだ。

 一度は諦めた、双子の片割れが戻ってきてくれたのである。今はその事を、ナーラダのリコに話すわけにはいかない。知られたら、若しかするとメイドですら、辞めてしまうかも知れない。何よりも、あの歳で生活力は恐ろしいほどあるのだから。

 ナーラダ村のナーラダのリコの評価は信じられないほど高くなっていた。あそこの村長は、彼女の事務能力や画期的な人糞処理による、土壌対策により。小麦の生産量が高く、既に水害以前の状態に戻っていた。

 其れだけではない。水害により、決壊してしまった運河の堤防の応急処置の工夫も大した物だと思っている。何より、水害を受けた村の殆どが、未だに復興できずにいたのだから。


「どうせ、貴女は無理遣りにでも、何とかするでしょう。私なら、其れこそ跳びだして行ってしまうでしょうから。それなら、貴女にはマリアの評価を積み上げるのに、協力して貰った方が良い物ね」

「え。」


 アリス・ド・デニム伯爵夫人は、本当ならナーラダのリコをあんな遠くに行かせたくは無い。側に置いておきたい。何しろ、産んでから全く会うことも話すことも出来なかったのだから。

 そして、マリアの影武者というのは上手いこと言ったと思う。自分の望み通りに、母上と呼ばれるのだから。今は赤の他人として、接しなければならないけれど。

 自分の子供を失った、悲しみが少しずつ取り戻されているような気がして、一寸嬉しい物だった。それでも、対外的なことや、自分の気性のことを考えると、自分の意志では無いとは言え。捨てた母親を許してくれるか、不安でしょうがなかったから。取りあえず、ナーラダのリコが彼女を好きになるように、付き合っていこうと思っている。



 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ