試験の結果発表 6
奥様もあたしも、オマルのお世話になった。ぶっちゃけ気まずくて仕方が無い時間だった。
お互い女同士だし、そのあたりどうと言うことも無いのだけれど。矢っ張り居たたまれない。
御貴族様は、使用人に下の処理なんかも任せるから、こういった事も気にならないのかも知れない。この人はこの時代の人間なんだと思う。変に昔の記憶があるせいで、こういった事に違和感を感じるのは、転生者の定めなんだろうか。
因みに、ナーラダ村ではあたしの提案で、排泄物を集めて堆肥にする試みが、数年前から始められている。村に帰れれば、その結果なんかも知ることが出来るかも知れない。矢っ張り村に帰りたいなって思う。
お花摘みから、一番に帰ってきたメイドのサリーが、手洗いボウルに水を汲んで持ってきてくれた。奥様は近くにわき水が出ている場所があるから、この辺りで休憩を取ることにしたらしい。生理現象に負けて、休憩を取るように言ったわけでは無かったみたいだ。
「此所のわき水を見付けたのは私なのよ。其れを、ディーンが整えてくれていたの」
サリーが、汲んできてくれたボウルの水で、奥様が手を洗いながら言った。一寸どや顔に見える。
確かに、こう言ったわき水が湧いているところを見付るって言うのは、結構な幸運の持ち主でないと、一寸無理なのよね。だから、猟師達なんかは他の仲間にも秘密に為ていたりするんだ。
飲み水に使えるかどうかは、一寸判らないけれど。これだけ綺麗な水なら、日の光が強ければ、飲んでしまうかも知れないな。
あたしもわき水のありかは、何カ所か知っているけれど。この辺りにあるとは思わなかった。この辺りはかなり標高の高い、コーテラ山の中腹に当たるから、こう言ったわき水が出ていても不思議は無いのかも知れない。
コーテラ山は、シーゲラ山脈の山々の一つである。このシーゲラ山脈は王国の天然の要堺の役割を担っている。因みに、この山脈の山間にある平坦なところに、マルーン平原が広がっている。
つまり、彼の蛮族達の国が、王都を滅ぼすためにはマルーン邦を抜けなければならないんだ。賢者様が、見せてくれた地図を思い出すと。マルーンの領都が落ちたら、王都まで一本道に成っていた。マルーン邦が陥落すれば、王都まで、簡単に攻め込むことが出来る。
此れって、奥様はこの王国の命脈を握っていることにならないかな。もしも、奥様がその気になったら、王都を陥落させることが出来る。
それに、マルーン邦は結構な穀倉地帯だし。連中から見たら、これほど旨そうな子山羊に見えるのかも知れない。
サリーは、当然という顔をして、馬車からオマルを持ち出して、何処かへ持って行く。たぶん、森の中に捨てに行くのだろう。メイドの立場なら、彼の仕事は、間違いなくあたしがすることに成るだろう。何しろ、メイドとしてのキャリアはカナハのサウラを覗くと、あたしが一番下っ端だから。一寸、最近はそう言いながらも、あんまりそう言う仕事が回ってこないのだけれど。良いんだろうか。




