試験の結果発表 5
待つこと五分くらいかな。手元に時計がないから、今何時かなんて判んないんだけどね。因みに、時計に相当する物は日時計か、砂時計の類いになる。そういった物を観測している者が、いるって事なんだけれど。そう言った役割の人がいないから、此所では奥様が決めることになる。
太陽が上がっていれば、その動きでだいたいの時間は予測できるから。其れが目安になっている。
そのうち機械仕掛けの時計は、作られるだろうけれど。未だ先の話になるだろう。若しかすると、王都の方にはあるのかも知れないけれど。このマルーン邦にはそう言った技術は伝わってきていない。あたしが作っちゃっても良いかもしれ無いんだけど。問題は、あたしの頃の時計って言うと、基本的にコンピューター制御の精密機械の類いだったから、どんな構造か知らないんだよね。
そんなことを考えながら待っていると、扉をノックする音が響く。
「安全を確認しました。奥様達はどうなさいますか」
父ちゃんの声が、呼びかけてくる。一応今回の遠征の、指揮は何と、父ちゃんが受けている。荒事は得意だけれど、こう言った仕事が出来るとは思わなかった。何しろ、あたしの前ではポンコツだからね。
だいたい敬語がしゃべれるなんて思わなかったよ。勿論設定からすると、当然話せるはずなんだけれど。村では、田舎者丸出しだったからね。
特にこの遠征中は、真面な指揮官役を熟して要るみたいに見える。元護衛騎士の肩書きは伊達ではないらしい。
窓の外では、四人のメイド仲間が集まって、お花摘みに出掛けようとしていた。護衛役にジャックの奴をチョイスしているみたいだ。其れって、ヤバくないかな。腕は立つから、其れなりに使えるだろうけれど。彼奴は絶対覗くに違いないからね。
レイの金髪頭は、どうやら火起こしを為て居るみたいだ。昼休憩のために、他の隊の、男どもを捕まえて、昼飯の用意をし始めている。今日の昼飯は、干し肉のスープって処かな。他の連中は森の中に消えていく者と、見張り番に別れた。交代で立ちションに行くんだろう。
長い移動ではないから、此れでも結構楽なんだよね。この間、奥様達が村々を視察に向かったときは、こんなに楽では無かったと思うのね。其処を支配している貴族の御屋敷を使ったとしても、そう上手く行くわけでも無いから。護衛全員が止まるなんて事は出来ないからね。
「私は少し……。ジェシカは彼の子達と向かいなさい。そろそろ辛いのではなくって」
と、ジェシカの方を向いて話す。
「あ、はい」
「貴女も行こうね」
「え……」
ジェシカ・ハウスマンさんは、カナハのサウラのことを連れて、開けて良いと、父ちゃんに告げる。
扉が開いて、いわゆる御者の格好を為た、父ちゃんが足下に踏み台を用意して、待っていた。
普段の父ちゃんらしくない、恭しい態度で、ジェシカ・ハウスマンさんの手を取って、降車のエスコートをしている。其れを見た、メイドさん達が此方に近付いてくる。
「其れでは皆さんで、少し散歩に向かいましょうか」
意外なことに、ジェシカ・ハウスマンさんはメイドさん達にも好かれている。ドリーさんと違って、若くて話が分ると思われているからね。意外に怖い子なんだけれどね。
彼女もお花摘みだよね。少し我慢している様子だったからね。此ればかりは、どんな人もどうしようもないから、仕方が無いよね。じつは、あたしも一寸必要なんだけどな。
「済ませたら、貴方にお話があります。食事までには時間もあるでしょうから、其れまでには終わらせますね」
いよいよ試験の結果発表らしい。何だかなー。




