表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
山猫は月夜に笑う 呪われた双子の悪役令嬢に転生しちゃったよ  作者: あの1号


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1002/1216

試験の結果発表 5

 奥様の命令に対して、御者席にいる父ちゃんが反応した。

「全体止まれ」

 奥様より大きな声で、全体に対して命令を伝える。周りを固めている兵隊の長が、同じように声を張り上げる。最近はこの遣り取りが、当たり前になっちまっている。ザ・軍隊って感じのする掛け声だと思う。

 馬車が二台に、私兵二小隊。メイドとそれらを統率する、侍女のジェシカ・ハウスマン。勿論あたしもそのメイドの中に入っている。

 こういった事は、軍隊独特の物なのかも知れない。あたしも小さな隊商と行動を共にしたことがあるけれど。こんなに物々しい遣り取りをしていなかったからね。

「皆、休憩にしましょうか」

「奥様、お茶はどうなさいますか」

「要りませんよ。兵には、水で薄めたワインを飲ませるように、小隊長に伝えなさい。そろそろ限界に近付いているでしょうから。そうした方が良いのよね、マリア」


 奥様はニコニコしながら、あたしの方を向いてそう言う事を言った。

 彼の水で薄めたワインは、寒いときに身体を温めるための糧食の一つだ。因みに、あれには判らないくらい、塩が少量入れられている。彼のレシピはあたしが餓鬼の頃、父ちゃんに教えたレシピだ。

 元々、ワインを水で薄めた飲み方は、あったらしいのだけど。それに、あたしが塩を入れることを提案したんだ。

 本当は、砂糖と塩を使って、経口保水力を高めた飲み物が欲しかったんだけど。流石に、あたしらみたいな貧乏人には砂糖なんて、手に入れることが出来なかったからね。

 不思議よね。砂糖より安物のワインの方が、ずっと安い。この辺りに砂糖大根もサトウキビも見えないから、作られていないから仕方が無いのかも知れない。因みに、ブドウ畑は結構見かけるから。そう言う事なんだろう。

 あたしがこのデニム家に雇われて良かったことの一つが、御屋敷で出る甘い物の存在だった。何より、食事に甘みがあるって事だけで、一寸嬉しいことだ。

 馬車が静かに止まると、馬車を引っ張っている馬の動きが変わる。周りを守っている兵隊さん達の動きが、忙しない物に成ってくる。父ちゃんの小隊の野郎どもも、まるで軍隊みたいに、きびきびと動きを見せている。まるで兵隊みたいだ。兵隊なんだけれどもね。あまりにも身近なんで、とても軍隊には見えないのよね。

 御者役をしている、チッタの奴が、此方を覗き込んでくる。この馬車から、御者席の方には小さな窓が付けられていて、お互いに相手の顔を見ることが出来るようになっている。大概は、御者の方がこっちを覗くなんて、いわゆるマナー違反だ。

 隣に座っている、父ちゃんにチッタが小突かれた。あれ痛いんだよね。痛いで済んでいるだけましだけどね。本気なら、遺体に成りかねないから。

 休憩と言っても、決められた手順がある。隊列の周りに危険は無いか、其れを確保してからが休憩になる。あたしらが、この馬車を降りることが出来るのは、最低でも五分は掛かる。

 何時もなら、父ちゃんが扉を開くまで、外には出ることが出来ない。お花摘みなんかには、単独で出ることなんか出来ない。他のメイドさん達なんかは、皆でわいわい言いながら、お花摘みに出掛けることもあった。普段なら、あたしも皆とお花摘みに行くんだけど。流石に、こういう立場にいると、そう言う訳にもいかない。

 いわゆるおまるを使うんだよね。行軍みたいな作戦行動なら、穴ほって目隠しを付けるらしいんだけど。短期間の移動だし、そんなに多く準備できないから、皆が出たら馬車の中でオマルを使うんだ。その辺りは奥様も同じなのよね。

 因みに、男どもは立ちションが基本だ。如何したって、定期的な休憩が必要に成るのは判るよね。

 此ればっかりは、どんなに偉くても、おきれいでお上品にしていても、誰でも如何することも出来ないことなんだ。聖女だろうが、どうしようもないことだからね。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ