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お姉ちゃんは悪役令嬢?

 まだ薄暗い、森の中。早くも蝉たちが、自己主張をし始めている。

 あたしの下履きは朝露で、すでに濡れだしている。昨日の雨のため、森の中はしっとりと濡れている。視線を上に向けると、夏の雲が、ゆっくりと南から北へ流れてゆくのが見える。太陽は、山の向こうからは顔を出してこない。

 森の中を突っ切るように切り開かれた、小道を荷馬車が少し慌てたように向かってくる。荷馬車の御者台には、革製の胴着に探検で武装した男が二人。厚手の幌で隠されているが、おそらく荷台には12才の女の子が縛られて、無造作に乗せらているはず。

 あたしは、矢筒から矢をつがえた。手はず通り父さん達が、動いてくれるのをまつ。こっちは気質の狩人にしか過ぎないのだから、よほど上手くやらなければ犠牲者が出ることになる。子供に危害を加えられたら最悪で、一文の金にもならなくなっちまう。

なんと言っても、今回の獲物はさらわれた、伯爵のお嬢さん。出来れば無傷で誘拐犯から取り返すこと。乙女ゲーム(さくらいろの君に・・・)のオープニングシーンで、さらわれたご令嬢に成り済ます。つまりあたしがこのゲーム世界の、悪役令嬢だったりする。まるでラノベのような話だけれど、あたし前世持ちなのだ。しかも困ったことに、やくまわりが悪役令嬢。すごい悪女。自分のそっくりさんに成り済ますのだ。

 オープニングシーンでは、誘拐されてきたマリア・ド・デニム伯爵令嬢が転がされている荷馬車を転倒させて、乗ってる人間皆殺しになっていたんだけど、お嬢様を無事に奪還して、報奨金を頂こうという企画になってるから少しばかり手間になってる。父さんが悪いこと考えないようにするのに苦労したわ。

 荷馬車が突然とまった。前もって仕掛けておいた、ロープが荷馬車の進行を妨げた。あたしはそれに併せて矢を放つ。すぐに男の悲鳴が聞こえる。あたしのほほには苦い笑みが浮かぶ。今、撃った鏃には毒な塗られている。少しでも、傷つけば毒の効果で動けなくなるはず。

 矢は御者の左の太股にささっている。これで一人は無力化された。残りの一人は、慌ててあたしとは逆方に回り込もうとする。そちら側には、父さんとニックが隠れている。

 そいつの尻に矢が生えた。たぶんニックのが打った矢だろう。

 あたしは森に中から、顔を出した。もちろん次の矢を番えるのは忘れない。相手は誘拐犯。どんなうごきをするかわかった物ではないのだから。

「死にたくなければ獲物を捨てな」

 父さんも森の中から、出ながら言った。ドスの聞いた良い声である。

 父さんはでかい熊を思わせる、悪人顔である。可愛いあたしとは似ていない。


 


 

 

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