第32話 勧誘と決意
私はレティとともに、家庭科室に来ていた。
そこで、私が村にいた時の友達であるトルカと会ったのだ。
さらには、公爵令嬢であるティアナ・ソラシアさんが現れ、彼女とトルカが親友だと知ったのである。
「そういえば、ここは家庭科室だけど、トルカは家庭科部なの?」
「あっ……」
しばらく会話した後、私はそう問いかけていた。
そういえば、ここに来たのは、家庭科部の勧誘かもしれないと考えていたことを、思い出したのだ。
「ルリア、あのね……この学園に、家庭科部は存在しないんだ」
「え? どういうこと?」
「私は……家庭科同好会に所属しているんだ」
「ええっ!?」
トルカの言葉に、私は驚いた。
どうやら、家庭科部というのは、この学園にないようだ。だが、トルカは家庭科同好会なるものに所属しているらしい。
それはつまり、どういうことなのだろうか。
「この学園の部活は、部員が五人必要なんだ。でも、現在この家庭科同好会には、三人しか部員がいなくてね。だから、部活としては認められず、同好会という形になっているんだ」
「な、なるほど……」
トルカの言葉で、私は理解する。
家庭科部は、人数不足で同好会であるようだ。
しかし、そうするとある疑問が生まれる。
「家庭科部って、そんなに人気がないんですか? どうも、そうは思えないんですけど……」
その疑問を、レティが先に口にしてくれた。
家庭科部とは、料理や裁縫といったことをする部活であるはずだ。そういう部活が、人気がないとは思えないのである。
「それには、色々理由があってね……」
「理由ですか?」
「ええ、その理由の一端は、私にあるの……」
「え?」
「おや?」
そこで、ティアナさんが声をあげた。
薄々思っていたが、ティアナさんも家庭科部の一員であるようだ。
しかし、ティアナさんが原因とは、どういうことだろうか。
「ほら、公爵令嬢って、色々と近寄りがたいでしょう? だから、皆ティアナさんがいる部活には、恐れ多くて入れないと思っているみたいで……」
「あっ……」
「なるほど……」
私もレティも、その言葉に納得する。
確かに、公爵令嬢は、その地位により近寄りがたい存在だ。そのため、近寄れないと思ってもおかしくはない。
人気が出る場合もあるかもしれないが、ティアナさんはそういう風にとられてしまったようだ。
「それに、家庭科部って、そもそもあんまり魅力的ではないんだと思うんだ」
「え? そうかな?」
「ほら、貴族の人達は、裁縫や料理なんてしないでしょ? それに、平民の子達は、家でそういうことをやることも多いし、わざわざ部活でやりたいとは思わないんじゃないかな?」
「た、確かに……」
さらに、トルカからの指摘によって、色々とわかる。
確かに、その言葉の通りかもしれない。貴族も平民も、それ程家庭科部に魅力を感じないのだ。
「後、この同好会はって、去年作ったものだし……」
「え? 去年なの?」
「うん。ティアナが、裁縫や料理をしてみたいって聞いて、それなら、学校でそういう場所を作ろうかと思ったんだ」
「え? すごい……」
そこで、トルカから驚くべきことが語られた。
この家庭科同好会は、去年作られたものであるようだ。
それなら、上級生は入らないだろうし、人がいないのも当然かもしれない。
それにしても、トルカの行動力はとてもすごいものだ。
私は、その部分にも純粋に驚いてしまう。
「トルカには、色々と迷惑をかけてしまったわね……」
「別に、いいよ。なんだかんだ、作るのも楽しかったしね……」
そこで、再び二人は笑い合った。
本当に、仲がいい二人だ。色々と苦労していても、楽しそうなのはこの仲の良さがあるからなのだろう。
「ねえ、レティ……」
「うげっ? なんですか?」
「やっぱり、家庭科同好会に入る気はない?」
「ああ、そういうことですか……」
そんな中、私はレティに小声で話しかけていた。
色々と話を聞いて、私は家庭科同好会に入りたいと思うようになっていた。
友達のトルカもいるし、ティアナさんも優しそうだ。何より、家庭科部の活動内容である裁縫や料理といったものに、強い興味がある。
「でも、面倒くさいですよ。部活なんて……」
「あ、それなら、大丈夫だよ」
「ぐえっ?」
レティの言葉に、トルカが反応した。
どうやら、私達の言葉を聞いていたらしい。
「二人の話は、聞いていたよ。勧誘させてもらうけど、いいかな?」
「あ、うん……」
「まあ、はい……」
「二人が入ってくれると、本当に嬉しい。そしたら、この同好会は部活になるからね。ちなみに、ここの部活は基本的に緩いから、来たい時に来てくれたらいいよ」
トルカは、勧誘始めていた。
その言葉から、この同好会はかなり緩いらしい。
それなら、レティでも安心だ。面倒くさい時は、行かなくてもいいのである。
「あ、全然来てくれないのは困るよ? 週に一回……いや、二週に一回でいいから、来て欲しいな」
しかし、流石に一か月来ないなどだとまずいらしい。
それは、当然のことだろう。
「後、この学園の文化祭の時は、出し物もあるから、そこは大変かも」
そして、文化祭の時も大変らしい。
それも、部活でかなり重要な催しだと予想できるため、仕方ないだろう。
話を聞いて、私は部活に入りたいと思った。
というか、私に関しては、もう部活に入ることをほぼ決めていたくらいだ。
なので、問題はレティである。
「まあ、お姉様のお友達ですし、いいかもしれませんね。あんまり、来ないかもしれませんがね……」
「レティ……」
どうやら、レティも部活に入る気になったようだ。
あまり、来なくていいというのが、決め手になったらしい。
「あ、でも、私達が入ったら、また他に部員が入って来ないかも……」
「そんなの問題ないよ。というか、それで入らないでなんて、思わないよ」
「そ、それなら、よろしく」
私の最後の不安も、トルカが払ってくれた。
こうして、私達は家庭科同好会に、入ることを決めるのだった。




