第26.5話(レティ視点)
※この話は、レティ視点の話です。
私の名前は、レティ・フォリシス。
誇り高きフォリシス家の次女にして、神童と呼ばれている才能溢れる美しい天才です。
昨日は、お父様とお母様がやってきて色々と大変でした。
ですが、今日は特に予定もありません。という訳で、部屋でゴロゴロしています。結局、これが一番いいんですよね。
「レティ」
「うっ……」
そう思っていた私の耳に、戸を叩く音が聞こえてきました。しかも、その声はお兄様の声です。
一体、なんの用でしょうか。休みの日くらい、ゆっくりさせてもらいたいものですね。
「はい。お兄様、なんでしょう?」
「買い物に行くが、お前も来るか?」
「ほほ……」
戸を開けてお兄様に用件を聞くと、そのような解答が得られました。
それは、中々魅力的な提案かもしれません。
私は、基本的に部屋に引きこもっていたいと思っています。しかし、買い物というなら、話は少し別です。
なぜなら、欲しいものが買えるからです。やっぱり、色々と欲しいものはありますからね。
面倒くさいという気持ちもありますが、今日は行ってもいいでしょう。
「あ、ちなみにお姉様は……?」
「ルリアには既に聞いてきた。行くと言っていたぞ」
「そ、そうですか……」
しかし、私はここであることを思い出しました。
それは、お姉様のことです。
今日の外出は、お姉様も行くそうです。それなら、私は行かない方がいいかもしれません。
なぜなら、お姉様にとっては、お兄様と二人きりでお出かけという方が、魅力的なはずでしょう。
「きょ、今日は遠慮しておきます」
「ほう?」
「なんだか、昨日で疲れてしまったみたいで……」
「ふん……」
そう思って断ろうとした私を、お兄様は笑いました。
その態度で、私にもわかります。お兄様は、私が嘘をついていることに、気づいていることが。
「お前が、何を考えているかはわからないが、遠慮しているというなら、それはやめろ」
「い、いえ……ですが、お姉様もお兄様も、二人きりの方がいいでしょう?」
私の心は、既に見抜かれているため、素直に答えることにしました。
すると、お兄様は少し真剣な顔になります。
「お前の姉が、お前がいないことに喜ぶと思っているのか?」
「そ、それは……」
お兄様に言われて、私は驚きました。
なぜなら、お姉様の性格的に、私がおらず、お兄様と二人きりになっても、喜ぶはずがありません。
むしろ、心配して部屋に来る気がします。お姉様も、私が買い物だけは外に出るということを知っていますから。
「わかったようだな?」
「ええ……」
「それなら、答えは一つだろう?」
お兄様の得意気な顔が、少し腹立たしいです。
お姉様への理解で、この兄に負けるなど、とても悔しいことです。いつもは、私の方がお姉様の心をわかっているはずなのに。
「それに、この俺もお前がいなくて喜ぶなどということは、あり得ないだろう」
「え?」
そんな私に、お兄様が意外なことを言ってきました。
珍しく、私に優しいことを言ってきたのです。
まさか、悪い物でも食べたのでしょうか。いや、もしかしたら、やっと可愛い妹の魅力に気づいたのかもしれません。
仕方ありませんね。ここは、この妹も可愛く返してあげましょう。
「ありがとうございます、お兄様」
「……」
私は、お兄様に可愛く返してあげました。
すると、お兄様が黙ってしまいました。私も、なんだか変な汗が出てきてしまいます。
これは、選択を間違えたようです。そういえば、この間お兄様に対して、こういう返しはしないようにしようと決めたばかりでした。
どうでもいいことなので、覚えていませんでしたが、同じミスを犯してしまうとは、不覚です。
「……まあ、準備ができたら、玄関に来い」
「は、はい……」
それだけ言って、お兄様は去っていきました。
なんだか、いつもの覇気がほとんどなくなっていました。
やはり、私が可愛く振る舞うとお兄様も調子が狂うようです。
私は変な気分になり、お兄様も調子を崩す。これに、メリットはないのでしょう。
「いや、待てよ……」
しかし、私はあることを思いつきました。
これは、もしかしたら使えるかもしれません。
お兄様を怯ませたい時は、可愛く振る舞えばいいということです。
私も、多少気分が狂って、お兄様に変な目で見られますが、問題ありません。そもそも、お兄様に変な目で見られるのはいつものことです。
こうして、私は新しい武器を手に入れるのでした。




