第23話 お母様の思いは
私は、お母様とレティと一緒にお茶をしていた。
しかし、レティが席を外したため、今はお母様と二人きりだ。
「ふふ、ルリア……」
「お、お母様……」
そんな中、私はお母様に抱きしめられていた。
特に、脈絡もなく、こうなったのだ。ただ、お母様は、時々こうして私を抱きしめてくるので、そこまで驚いてはいない。
「うん、久し振りの娘は、やっぱりいいわね……」
「そ、そうですか……?」
「ええ、リクルドやレティは、私がこうするのを嫌がるから、ルリアだけが私の癒しね……」
お母様は、私を抱きしめながら、そんなことを言ってきた。
お兄様やレティは、お母様に抱きしめられることを拒否している。二人とも、恐らく恥ずかしいのだろう。
レティに関しては、再会の時だけは許しているが、あの時だけは特別らしい。
「まあ、二人とも、昔色々とあったから、仕方ないと思うのだけどね……」
「お母様……」
そこで、お母様はそんなことを言ってきた。
それは、過去のお母様に関することだろう。
「昔の私は、あの人とも上手くいかず、暗い人間だったわ」
「はい……」
「でも、あの人が変わってから、私も変わることができた。だんだんと明るくなれたわ。これも、あなたのご両親のおかげね……」
「は、はい……」
お母様は、昔を振り返るようにそう言ってきた。
私の本当の両親が、お父様を変えたことによって、お母様も変わった。そのことは、とてもいいことだと思う。
そして、そのような両親を、私は誇りに思うのだ。
「でも、お母様。二人が、抱きしめられたくないのは、そういう理由ではないと思います」
「え?」
「ただ、恥ずかしいのだと思います」
そこで、私は指摘する。
お兄様もレティも、昔のお母様に関しては、何も気にしていないはずだ。
ただ、年齢や性格的に恥ずかしいだけなのだ。
「そ、そうなのかしら? まあ、確かにリクルドはもう大人だし、レティも思春期。それも、仕方ないのかもしれないわね……」
「ええ、そうです」
私の言葉で、お母様はとりあえず納得してくれたらしい。
恐らく、私の推測は外れていないだろう。
「さて……」
お母様は、私から離れて、再び姿勢を正す。
これで、抱きしめるのは終わりらしい。
「それにしても、レティは遅いわね……」
「そうですね……」
お母様の指摘に、私は同意する。
レティが、中々帰って来ないのだ。もしかして、何かあったのだろうか。
いや、家の中なので、レティに何かがあれば、もっと騒がしいはずだ。そのことから、一つのことが考えられる。
「もしかしたら、お兄様に捕まったのかもしれません」
「確かにそうかもしれないわね」
「はい。レティは、よくお兄様に説教されていますから……」
恐らく、レティはお兄様に捕まってしまったのだろう。
それなら、遅いのも納得できる。
「まあ、念のため、呼びに行ってもらおうかしら?」
「それがいいかもしれませんね」
そこで、お母様はメイドさんを呼びつけた。
とりあえず、レティのことを確認してもらうためだ。
お母様の指示で、メイドさんはレティを探しに行くのだった。
「リクルドの説教も、長いものね。あの人に似て、きつめのしつこい性格だし……」
「お父様と……ですか?」
「ええ……」
お母様は、お兄様に対して、そんな評価をした。
確かに、お父様とお兄様は似ている所がある。しかし、今のお父様はそんなにきつめでもないし、しつこくもないので、少し想像ができない。
「言っておくけど、最近もそうなのよ。あの人、根本がそういう感じだから」
「そうなのですね……」
そう思っていた私だったが、お母様の言葉に驚く。
どうやら、お父様は今も変わっていなかったらしい。私達には見せないが、妻であるお母様には、そういう所も見せるのだろうか。
「それに、細かいことにうるさいし、いつも上から目線だし……」
お母様は、お父様の悪い所を挙げ始めてしまった。
やはり、一緒にいる時間が長いと、色々と思う所があるらしい。
「で、でも、いい所もありますよね?」
「え? まあ、なんだかんだ優しいし、結構可愛い所もあるし、指示も的確だし、言っていることも正しいけど……」
しかし、私が質問すると、このようにすぐにお父様のいい所が出てくる。
色々と言っているが、お母様もお父様のことを深く愛しているのだ。
昔は、あまり仲が良くなったらしいが、今ではおしどり夫婦なのである。
「……なんだか、恥ずかしいわね。娘の前で、こんなことを言うなんて……」
「大丈夫ですよ。私は、こういう話は大好きですから……」
「そ、そう? それなら、いいのだけど……」
私は、そんな二人のような夫婦に、憧れている。
もし将来結婚するなら、このようになりたいと思う。
そのように、私達のお茶は続くのだった。




