第18.5話(レティ視点)
※この話は、レティ視点の話です。
私の名前は、レティ・フォリシス。
誇り高きフォリシス家の次女にして、神童と呼ばれている才能溢れる美しい天才です。
お兄様との話し合いを終えた後は、いつも通りの日常でした。
あの極度のシスコン具合は、少々気持ち悪いものですが、なんだかんだ抑えられるので、まあいいとしておきましょう。
さて、私は夕食も終わった頃、喉が渇いたので食堂に向かっています。
しかし、なんとなく嫌な予感がしてきました。引き返しましょうか。
「……考えすぎですよね」
そう思った私でしたが、喉が渇いているのに、そのままにするのはよくありません。
ただ、念のため、食堂の戸を少し開けて、中を見てみましょう。
「う、うわあ……」
すると、食堂で一人お茶を飲んでいるお兄様の姿が目に入ってきました。
なんだか、見覚えのある光景です。そして、やっぱり気味の悪い風景です。
帰りたいと思いましたが、お兄様なら既に気づいているでしょう。気配にも鋭い人なので、そのはずです。
この場合、逃げてもばれてしまいます。そうすると、後々厄介でしょう。とても嫌ですが、仕方ないので、出ていきましょう。
「お、お兄様……お邪魔します」
「レティか……」
私が入っていくと、お兄様は少し笑います。
また少し落ち込んでいるように見えます。励ました方がいいんでしょうか。大方、理由の方はわかっていますしね。
「お、お兄様、落ち込んでいるようですが、お姉様は、お兄様を嫌ったりしませんよ」
「……別に落ち込んでなどいない」
「いえ、落ち込んでいるんでしょう? お姉様を泣かせて……」
「違う……俺は、落ち込んでなどいない」
私の言葉に、お兄様はそう答えてきます。
ただ、これは嘘です。お兄様は、お姉様に嫌われるということに、とても敏感です。
しかし、そんなことは天地がひっくり返ってもあり得ないことでしょう。お兄様大好きなお姉様が、嫌いになるなど考えられません。
「ふん……」
まあ、本人達はお互いにそんなことは気づいていないのでしょう。
だからこそ、相手の一挙一動に動揺してしまうのです。なんだかもどかしいですが、それも仕方ありません。
ちなみに、私が二人に言ったりはしません。二人とも、私が言っても信じないからです。
「……今日は、すまなかったな」
「へ?」
「お前にも、色々と迷惑をかけた」
そこで、お兄様が急に謝ってきました。
その件については、一応謝ってもらいましたが、ここで改めてということでしょう。
お兄様に謝れると、少しむず痒いです。普段は、私が謝る側ですから、変な感覚になってしまいます。
「だ、大丈夫ですよ。私も別に、お兄様のことを嫌ったりしませんから」
「……」
照れ隠しに、私が少し可愛く言葉を返してみると、お兄様の表情が変わりました。
もしかして、引いているのでしょうか。そうだとしたら、とても失礼な人です。
「まあ、感謝しておけばいいのか?」
「え、ええ……」
なんだか、お兄様のいつもの歯切れがなくなっています。
もう二度と、お兄様の前で可愛く振る舞うことはやめましょう。こんな態度だと、私の方も感覚が狂ってしまいます。
「……」
「……」
私達兄妹の間に、変な空気が流れます。
やはり、私達二人だとおかしなことになるようですね。仲が悪いという訳ではありませんが、私とお兄様は微妙な関係性です。
こういう時に、お姉様がいてくれると助かるんですけど。
「……ところで、お前はこんな時間に何をしに来たんだ?」
「あ、いえ、水を……」
「そうか……」
そこで、お兄様が話を振ってくれました。
こういう所は、流石年長者ですね。助かります。
そういえば、私は水を飲みに来たんでした。もう喉が渇いたことすら忘れていましたが、水分補給は重要です。しっかりとしないといけません。
「……お前は、部屋に水を常備しておいた方がいいかもしれないな」
「あ、それは名案ですね……」
お兄様の提案に、私は深く同意します。
もう、ここでお兄様に会いたくありません。こんな気まずい時間は、こりごりです。
こんな気まずい空気になるくらいなら、怒られる方がましなくらいですよ。いや、やっぱりそれの方が嫌な気がしますね。
「それでは、私はお水を飲んできますから、失礼しますね」
「ああ……」
こうして、私とお兄様の会話が終わりました。
なんだか、とても疲れました。早く部屋に帰って、休みたいです。




