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公爵令嬢になった私は、魔法学園の学園長である義兄に溺愛されているようです。  作者: 木山楽斗
本編

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第7話 珍しい訪問者

 レティの合格通知が届いてから、少し経ち、私は部屋で勉強をしていた。

 もうすぐ、学校に行くのだ。少しでも、知識は蓄えておきたい。


「あっ……」


 そんな私の部屋の戸を叩く音が聞こえてきた。

 もしかして、レティだろうか。私の部屋を訪ねてくるのは、大抵彼女だ。使用人の可能性もある。


「ルリア、俺だ」

「え? お兄様?」


 しかし、私の予想に反し、戸を叩いたのはお兄様だった。

 考えてみれば、お兄様が私の部屋に来ることはない訳ではなかった。ただ、その回数が少ないため、想像できなかったのだ。


 私は、部屋を見渡し、片付いているかを確認する。

 お兄様が、どのような用であっても、部屋の中を少しは見られるだろう。いくら、お兄様が紳士的とはいえ、目に入るのは仕方ない。

 幸い、部屋は片付いている。普段から、こまめに掃除や整理整頓をしておして、本当に良かったと思う。


「今……開けますね」


 そう考えた後、私は戸を開ける。すると、そこにはお兄様が立っていた。

 今日は、お兄様は学園に行っていたはずだ。ただ、ここにいるということは帰って来たのだろう。

 そのため、かける言葉は一つだ。


「お帰りなさいませ、お兄様。もう帰られていたのですね?」

「ああ、今帰ったところだ」


 私の言葉に、お兄様は笑みを浮かべてくれる。

 もし、この言葉に喜んでくれているなら、とても嬉しいことだ。


「それで、どのようなご用件でしょう?」

「ああ、実はお前に補助委員をしてもらうにあたって、書いてもらわなければならない書類があってな。丁度、今日それが届いていたのだ」

「あ、そうなのですね……」


 私は、特別入学するレティの生活を補助する補助委員になることが決まっていた。

 お兄様は、その書類を持って来てくれたらしい。

 まさか、お兄様に直々に持って来てもらうなんて、少し恐れ多いくらいだ。


「お兄様、ありがとうございます。ただ、どうしてお兄様が直々に……?」

「問題ないだろうが、念のため書き方を教えておこうと思ったのだ。学園長の妹の書類に、不備があったとなれば、示しもつかないからな……」

「そ、そういうことだったのですね……」


 どうやら、お兄様は書類の書き方を、直々に指導してくださるらしい。

 それは、私にとってとても嬉しいことだ。お兄様と二人きりで指導して頂ける。こういう状況は、久し振りだ。


「……部屋に入っても構わないか?」

「あ、はい。どうぞ……」

「それなら、失礼する……む?」


 少し恥ずかしかったが、お兄様に部屋に入ってもらう。

 するとお兄様は、机の上に視線を向ける。


 そこで、私は気づいた。

 机の上は、勉強していたため、少し散らかっている。


「も、申し訳ありません、お兄様。机の上は、少し散らかって……」

「いや、問題ない。この程度で、散らばっているなどと言う者など、いないだろう」


 咄嗟に謝罪した私に、お兄様はそう声をかけてくれた。

 その言葉に、私は安心する。


「むしろ、感心したくらいだ。入学前に、少しでも知識を蓄えようとするその姿勢は、立派なものだろう。下の妹にも見習わせたいくらいだ」

「あ、ありがとうございます」


 しかも、お兄様に褒められた。

 お兄様に褒められるのは、とても嬉しい。これは、昔から変わらないことだ。

 厳しいお兄様に認められるのは、自信にも繋がるし、何より尊敬する人からの賛辞程嬉しいものはないだろう。


「さて、早速、書類を書くとしよう」

「あ、はい……」


 お兄様に言われて、私は机の上を片付ける。

 いつまでも、浮かれていてはいけない。褒められたのは、この一時だけのこと。次も褒められるように努力することが、大切なのだ。


「……ふっ、こうしていると昔を思い出すな」

「え? お兄様……?」

「いや、気にするな。戯言に過ぎん」


 そこで、お兄様がそんなことを呟いた。

 その表情は穏やかながら、どこか寂しいような気もする。


 お兄様の言う通り、昔はこのようにお兄様に指導してもらうことが度々あった。

 もしかして、お兄様はそんな昔を思い出しているのだろうか。あの日々が、お兄様にとって、大切なものだと思ってくれているのだろうか。


「ルリア、手を止めるな。俺の言葉など、気にする必要などないのだぞ?」

「あ、すみません」

「いや、構わない、この俺が、余計なことを言ったのが、そもそもの発端だ」


 お兄様に指摘されて、私は机の上の整理を進める。

 考えごとに没頭するのは、駄目だ。お兄様は、あまり怒っていないが、これは反省すべきことだろう。


「お兄様、お待たせしてしまい、申し訳ありません。書類の作成を始めましょう」

「ああ、そうするとしようか」


 こうして、私とお兄様は書類の作成を進めるのだった。

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