6話 朝の光
さほど進展はありません。日常の話しかな。
*改稿しました。一部を次話に移しました。
ベッドの上で目が覚めた。光が差し込んでいて、その先をたどって振り向くと、窓際の椅子にマコトが座っていた。カーテンが少しだけ開いている。あの光かあ・・・。
「ぅふぁ~っ!」
盛大にあくびが出た。上半身を起こして、そのまま伸びをする。くっくっくっと抑えた笑い声がして、マコトが俯いてるのが目に入った。
「無理して抑えなくてもいーよ、笑えば?」
別に恥ずかしくないしー。欠伸は必要な深呼吸です、って言ってた、どっかのお医者さんが。
「うん、ごめん、おはよう、ハルヤ」
まだ笑いながら、こちらに顔を向けてマコトが朗らかに言う。
「おっはよ」
すとん、とベッドを降りて、向かい側の席に座った。
「よく眠れたみたいだな。良かったよ」
笑顔のまんま。タレ目がすごい和む~。いいな~。ほこっとする。
「マコトは早いなー。ちゃんと寝た?」
「ん、それなりに寝たよ。・・・いつもこれくらいの時間には、軽く走ってるから。もしくは家の手伝いとか、弟たちを起こしたりとかしてるからさ。何もしないでいるのが変な感じだなあ。落ち着かない。」
「・・・へえ、ほんといいお兄ちゃんなんだな。五人兄弟だっけ?」
「そう。おれが一番上で、すぐ下が四つ下の弟、その年子で五つ下の弟、一番下が双子の妹たちでさ、九歳違うんだ。」
「え、九歳?それ、けっこう違わない?話しできんの?」
「いや、合わせるよ、っていうか教育?養育?ほとんど世話ばっかりしてるから、半分親っぽい。」
「だよなー。九歳じゃあ・・・。え、じゃあ、マコトが九歳の時に生まれたのか、小学校四年?五年?」
「四年だよ。」
「へえ~。名前は?ゆうって子がいるんだっけ」
「ゆうと、な、すぐ下の弟が。その下は幸人。双子は美里と美琴。」
「なんか名前そろえてる?すごくない?」
「うん、母親の趣味で」
「おかあさんの趣味か・・・」
「俺は父親がつけたんだけどね。他は母親がつけたんだ。」
「ふーん、でも、マコトと美琴、ちゃん?一番下の子?は、似てるよね。」
くすくすと嬉しそうに笑って、
「そう、だからさ、たまに拗ねるんだけどね、美里が。俺と美琴が双子みたいな名前してるから、美琴にずるいって」
「・・・ああ、そう・・・」
すっげー嬉しそうなんですけど。間違いなくシスコンだよね、この人。
「ハルヤは?一人っ子?」
「うん、そう。・・・わかる?」
「まあ、なんとなく。わかるよ。一人っ子ってさ、余裕あるよね、いつも。」
「そう?」
「うん、見ててそう思う。自分の分は必ずあるっていう、余裕」
「自分の分?」
「おやつとかさ、おもちゃとか」
「えー、あー、そうなの?」
「うちは弟二人の争奪戦が激しいんだ。双子はちゃんと分け合うんだけどな。女の子だからかな~」
「へええ」
なんか賑やかそうでいいなあ。でも煩すぎておれには無理かも?・・・マコト一人だったらもらう。うん、お兄ちゃん欲しかったし。弟は要らないなー、妹も双子じゃなくて一人ならいいけど。口で負けそうだから、双子だとキツイ。って何考えてんだ、おれ。呑気だな、おれもマコトも。
「あのさ、ちょっと聞きたいんだけど、家族のことじゃなくて、そのさ」
おれの口調が変わったので、マコトも顔つきが変わった。
「・・・もしかして昨日の夢?」
言いだしにくくて、止まってしまったおれのセリフを、あっさり言われた。
「マコトも見た?」
「・・・見た。神様が出てくる夢だろ?」
「うん!!でさ、」腕を上げてみる。
「あるな、確かに。」
マコトも自分の腕を見て、そう呟いた。
・・・つまり、幻想じゃなくて妄想じゃなくて、ほんとにあったのだ。あの夢が。神様に会ったのだ。
しっかりと腕にはまっている、ピカピカの腕輪。きれいな色石がいくつも付いている。これが証拠。
「話しは四人でしよう。食事の前後で、四人だけになれるといいんだけどな」
「そうだね、早めに行ってみる?」
「そうしよう」
早速、二人して顔を洗って着替え・・ようとしたら、服が無かった。昨日、来ていた服は見当たらないし、ハンガーにかかっているのは、それぞれの学生服だけ。・・・いじらないでほしい、と言ったの、ちゃんと守ってくれてるんだ。良かった。うん、いい人たちかも?
「ちょっと待つか。別にこの服でもいいだけど。作務衣だと思えば」
「・・・そうだけど、ちょっと作務衣ってさ、爺っぽくない?せめて甚平とかさ・・・」
「甚平って半ズボンだろ?これは長ズボンだから、作務衣じゃない?」
「・・・そこ、こだわるとこ?」
「んー、いや、暇だからちょっと言ってみただけ。というか、ほら、間違った知識は後で恥をかくからさ、それはまずいんだよ、俺じゃなくて弟たちが」
「ああ、そう。」
教育の一環ですか、そうですか、どれだけ弟妹、大切やねん!!いちいち訂正してんのか。そのために調べたりとかもしてるのか。いやそれ、手間暇がスゴいんですけど、あふれる弟妹愛!!・・・ちょっとけっこうかなり羨ましいかも。いいなあ。仲良い兄弟。
「で、どこで待つ?ここで突っ立っててもしょうがないし。寝室に戻るか、あっちのソファにするか」
「ソファがいい」
「おっけ」
ポンとかるーく肩を叩かれて、先に扉を開くマコトに付いて歩く。
ソファに座ってクッションを抱きかかえて、ごろり、と横になって体を丸めた。
「なんだ、まだ眠いなら寝てていいのに」
「ぜんぜん眠くない。けど、この態勢、好きだから。ほっといて」
「わかった」
手持無沙汰なんだよね、ただ座ってるだけっていうのも。
マコトは特に何もせずに、ゆったりと背もたれによっかかっている。二人して、ちょっとぼーっと気を緩めたところで、ドアがノックされた。三回ゆっくりと、しっかりと。
「どうぞ」とマコトが返事する。
かちゃり、と音がして、
「失礼いたします」
緑色の髪が見えた。あー、ほとんど待たずに済んだなー。良かった。
「おはようございます」
っと、お返事!
「おはようございます」
変な顔された。なんで?
「わたしどもはお仕えしている立場が下の者ですので、上位者である勇者様がたは、わたしどもには丁寧語や敬語は必要ございません。今後はお気を付けくださいませ。」
ありゃ、注意された。むー。
マコトガ苦笑しながら言う。
「いきなりは難しいので、大目にみてください。よろしく」
「かしこまりました。僭越ながら、今後は必ずご注進させていただきます。できるだけ早く覚えていただけますように」
え。何それスパルタ!?
「勇者様がたは、準王族の位をいただいていらっしゃいますから、その地位にふさわしい言葉遣いをお願いいたします。」
キリッとした姿勢で宣言されました。うわー、うああ。この人たち、強気だ・・つか強い、うん。
「・・・よくわからないんですが、まだ。」ちょっと困った感じが声に出てるよ、マコト。
「できるだけ、言われたことは覚えるようにします。それで、服を着替えたいんですが」
「はい、それでは着替えの間に」
担当侍従さん二人の腕にはそれぞれ服一式があった。
今回も着替えの手伝いは断って、勝手に着る。ベルトが変わってて面白い。もしかして、剣とか下げられるタイプかな?あ、ちょっとワクワクする。いや、ほんとは良くないと思うんだけどね、剣ってさ。殺戮用じゃん、アレ・・・。お飾りならいいんだけどなー。勇者にお飾りってことはないよね・・・。
「できた?」
「うん、着替え終わったよ」振り向いてマコトに答える。
「じゃあ、このまま下に行こうか。あっちで女子を待とう」
「おっけー」
ということで、担当さん二人にすぐに下に行きたいと言い、一階の食堂へ。階段を足早に降りた。
すみません、改稿と言うか、話しを切り上げまして、
後半を書き直して、次話にします。