5.25話 夢の中で(マコト)
マコトばーじょんです。
ちょっと新情報あり。
ぽかぽかする。陽だまりの匂い。ああ、また公園でうたた寝してんのかな、ついベンチに座ると寝ちゃうんだよな、弟たちのお守り最中なんだけど・・・・と、弟たちのことを思い出して目が覚めた。
弟?あれ?
違う、弟じゃないけど弟みたいな感じでハルヤの面倒見てて・・・あれ?
「ここどこ?」
サラサラと流れる金の砂が空気中を舞っている。それはとてもキレイな現象で、しかし眩しいこともなく、ただ柔らかな光がほんのりと目に映る。周囲は白っぽい壁?のようなものに囲まれていて、まったく外が見えない。というか、おそらくどこかの部屋の中だと思うのだが、どんな部屋だ、ここ。・・・俺、宙に浮いてるんだけど。
イスに座っていないのに、座っているような体制で、ぷかぷかと浮かんでいる。はてこれはいかに。
「寝ようとして、でも眠れないなー、って思ってて、それで、・・・なんでこの状態?」
体はある。ように感じられるけど、実際のところはどうなんだろう。夢かな?
『夢・・・ほんとの、夢』
「っわあ!!」真後ろから声が!!
勢いよく振り返ると、そこには小学生くらいの背丈の白い影があった。周りも白いのにこの子も白い。わかりにくい。つか、顔が見えないんだけど?
「えーーーっと、顔が見えないんだけど、君、誰?」
こわいけど、のっぺらぼうというか、顔なし?じゃないよね、まさか。
何か光っぽいのでぼやけてて顔がわからない。体もぼやけてるというか、ええと。
『わたし、呼んだ、あなた、たち、4人』
「・・・ええ?」
一瞬、言葉に詰まった。え、それ、ほんとに?この子に呼ばれたの?
『勇者、助けて。わたしの、半神、夜の、女神』
「えーっと、つまり、俺が、というか、俺たちが勇者で、その、半神?さん?が夜の女神さんで、その女神さまを助けてほしい、ってこと?」
こくり、と大きく首が縦に振られた。ああ、そう、そうなんだ、で、それで、
「ここどこ?」
『夢、の、中、の、神域』
「他の3人は?」
『一度、に、呼べない。一人、一人』
「んー。つまり一人ずつ、ってことか。・・・で、なんで俺たちなの?」
それはやっぱり疑問だ。なぜ、出身地も年齢も誕生日も趣味もまるで共通点がない俺たちが?
『ケガ』
「ケガ?」
小さい子どものような体が、前に出た。右足を出して、その右足は他の部分より一層白くて影が薄い。
『足、ケガ、みんな、同じ』
息を止まってしまった。足のケガ。そういえば、ハルヤは入院してたとか、言ってたな。
俺ももともとは事故ってケガして、そのリハビリで水泳始めて・・・小学生の時だけど。
まさか、女子二人も?過去にケガしてるのか?
『わたしと、同じ。呼ぶのに、必要な、共鳴。共振、しやすかった。あと、耐性。悪魔に、対する、耐性』
「悪魔?いるのか?」
『いる。異界から、来た、悪魔。夜の、女神を、攫った。隠した。酷い。悪い、奴。だから、悪魔』
「ああ、悪いことしたから悪魔ね、ほんとに悪魔、ってわけじゃなくて」
ちょっとほっとしてしまった。本物の悪魔とか、無理だろう、戦うとかさ。
『悪魔』
「ああ、うん、わかった、それで、えーと、耐性?」
『耐性、と、順応性、魔力、の高い順に。4人』
「あ、そう・・・」
それなりに条件の基準をクリアしてた、ということか。嬉しくないけど。
「帰りたいんだけど、帰してもらえるのか?」
『終わ、れば』
「何が終われば?」
『夜、の、女神、取り、戻して、世界、回、復、それと、悪魔、追放、異世界、に。』
「それちょっと仕事多くない?」
全部押し付けられてるよね、コレ・・・。
『褒美、あげる。仕事、援助、あげる』
ぽわん、と光が一際強くなった。その光が収まると、ふわふわと浮かんでいる物体が、俺のほうに流れてきた。
『あげる、武器、あと、道具』
「それはありがとう。遠慮なくもらっとく」
右手で掴むと、するりとそれは腕にはまった。白いエナメルっぽい光沢の、金線でツタの模様が描かれている、所々に色石の付いた腕輪。見るからにお高そう。
『能力、いろいろ、あげる』
「え、能力?」
勇者体質以外に、何か?
またもやその子は・・・子どもにしか見えない女神サマは光を生み出して、その光はマコトの体に触れるか触れないかの所で消えた。たくさん。数えるのは途中でやめたが、20個は超えてると思う、確実に。
「何をくれたか、説明してほしいんだけど」
『わかる、機能、ある』
「・・・説明なくてもわかるってこと?」
こくん、と頷かれた。
「それは便利で助かるけど・・・」
うーん、イマイチこの子のことが信用できない。嘘は言ってない。言われてないと思う。けど、なんか・・・なんだろう、まあ、イキナリ全部話すとか、わかるとか無理だとは思うけど、俺のキャパからいっても。けど、なんだろう。何か引っかかるんだけど。
「ああ、そういえば、自己紹介してもらってないな、君の名前は?」
『光』
「ひかり?」
『光の女神』
「えーっと」
『ラーシア』
「あ、そう呼ぶのか。日本語では光の女神ね、意味的に。なるほど」
光ってことは、太陽神とか?そんな感じ?アマテラス、だっけ、日本の太陽の女神さま。
『時間、もう無理。また、あとで』
「えっ、もう!?」
慌てたが浮いているので身動きがおかしい。手を伸ばそうとしたが滑るように体が落ちていく。
「まだ聞きたいことも確かめたいこともあるんだけど!!」
やわらかな風に流されながら声を張り上げたが、返事はなかった。
そのまま光に飲み込まれるように周囲が白に塗りつぶされた。
浮遊感覚がいきなり消えて、重さを感じる。大きく口を開けて息を吸っていた。
勢いよく開いた目が天井を映す。ほのかに明るいのは朝になったからだろう。
ほっとして息をゆっくり吐いた。
体に力を入れてみる。うん、ちゃんと入る。動く。
もぞもぞと動いて右隣を見ると、気持ち良さそうに寝ているハルヤの顔が見えた。
すやすやと規則正しい息遣い。まだよく寝ている。
起こさずに済んで良かった、と、またホッとする。
音を立てないように、ハルヤを起こさないように、そろそろと起き上がる。
もう寝る気分じゃなかった。胃が落ち着かない。どこか疲れた感じもあって、水が飲みたかった。
窓際のテーブルを見ると、夕べの水差しとコップはまだそこにあった。
ベッドを降りて、そのテーブルまでは5歩。
すとん、と大きい背椅子に腰掛けてから、水差しから新しく水をついで一気に飲んだ。
夢の中の出来事・・・というか、話し合いというか。
新しく知った情報を再確認する。
「あとで4人だけで話せるかな・・・」
ポツリと小声で呟いた。
さすがにこの内容をこの世界の人には知られたくない。
「今日中に話せるといいな」
カーテンを少しだけ開けて外を見る。天気は快晴のようだった。
4人順番に書いてますので、次はトモカさんかなー。
それぞれちょっとずつ、新情報が出てきます。