1話 始まりは式場から
初投稿です。
どうぞよろしくお願いします。
目指せ完結!
*細かいところは改稿するかもですが、
本筋は変わりません。
うん、なにコレ、わかんない。
キラキラ光る床、なんで見えてるのかもわからない。
体は宙に浮いていて、ジェットコースターの下りがずっと続いてる感じ。
胃が浮く。うぇ。
おれ、コレ苦手なんだけど!!
すこん、と何かが、いや、何かから抜けた気配がして、
尻もちついた。イタイ。
ふらつく頭を右手で支え、左手は体を支えるために床に着けている。
目の前から徐々に光が消えていき、見えたのは、制服姿の3つの人影。
一人は男、見たことない制服で、たぶん高校生・・・だと思う。
ほかの二人も見たことない制服着てるけど、女子だ。
こっちも高校生かな? いずれにせよ、全員、自分より年上な感じがする。
あちらも気が付いたようで、こちらを凝視してきた。男子がこちらを見てる。
姿勢と顔の角度からして、俺しか見えてないみたいだ。
その男子の後ろに、二人の女子が、やはり座ったまま顔を見合わせている。
ぶるり、と体が震えた。どこだここ???
空気が明らかに東京と違う・・・。
息はできるけど、なんだろう、妙な変な匂いがする。
スッキリするような、甘ったるいような、変な匂い。
「これって、」
ちょっと悩んだ感じで、
「・・・一応、こんにちわ、初めまして、かな?」
たれ目気味の高校生・・・俺よりガタイがいいからきっとそう・・・顔つきも温和っぽいけど年上に見える・・・が、声をかけてきた。制服はブレザー。やっぱり見たことない制服だけど。
立ち上がって、こちらに歩いてくる。と言っても、たったの3歩で到着だ。
「ケガはない?」
さらっとごく自然な動作でおれの隣に座り込んで、顔を覗き込みながら言われた。
「・・・ないよ」
緊張したまま返事する。
「そっか、良かった」
にこっとする。普通に笑いかけてきた。あ、なんかほっとした。おれが。この人、ほんとに温和で穏やかで優しいタイプなんだろうな・・・。普通にこんなことが当たり前にできるってことは、コミュ力高いなー。友だち多いタイプだな。たくさんの人に好かれるタイプ。いい人。
「で、ここはどこだと思う?」
返事のしようがない。何を言えと。おれのむっとした感情にすぐに気づいて、
「ああ、ごめん、言いようがないよな。ごめん、ちょっと俺混乱してる・・・」
ふうう、とため息をついた。そのまま黙る。
あ、やっぱ隣にいるとよくわかるけど、身長差、けっこうあるな。おれより15センチは高いなあ。年齢差があるとしても・・・高校生と中学生じゃ違うの仕方ないけど、ちょっと悔しい。
おれもどうしていいかわからないから、少なくとも同じ人間で、男で、同じ日本人だと思うこの人に注目していた。ほかのところは怖くて見れない。というか、見たくない。
周囲にたくさんの人の気配、気持ち悪い・・・。
「そっちは大丈夫?俺たち、落ちてきたみたいだけど、ケガは?」
声を少し大きくして、隣の男子高校生が、女子二人に声かけした。
「ないわ。大丈夫よ。ところで、持ち物とかは?そっちはどう?」
「ああ、カバンがないな。下校途中だったんだけど」
「あたしもそうよ。家の近所を歩いてたんだけど。・・・カバンが無くなってるわ」
「わたしも帰宅途中で。カバン、無いですね・・・」
「おれも無くなってる。ってゆーか、おれ、リュックだったんだけど。背中から消えてる。」
「え!?リュックが?どうなってるんだ、いったい」男子高校生。
「リュックって背負ってたんでしょ?ひどいわソレ・・・身に着けていたものまで消えるなんて」
おかっぱに近いストレートの黒髪女子が言う。最初に返事したのも彼女だった。制服はおしゃれなブレザーで、リボンタイにベストも着ている。
もう一人はやや茶髪のツインテール、セーラー服もどきの制服。
うん、どうなってるのか、ぜんぜんわかんないな。だってリュックだけ消えてるんだよ。ポケットにハンカチは入ってるし、腕時計は左手にある。なのに、リュックだけ、無くなってるんだ。なんか二人が心配してくれたり怒ってくれたりで、ちょっとうれしいかも。人間らしくて、ほっとする。
「そっち行こうか」
とイキナリ隣の男子が女子のほうに向かって言い、すっと立ち上がって、おれに向かって手を伸ばす。
「立てる?」
「ダイジョブ」と言いつつ、手は借りた。
うん、なんか、この人、安全そうだし。少なくとも話通じる相手だし、親切だし。ここで引き離されるのは嫌だと思ったから。
周囲からのたくさんの目線がびっしり張り付いていて、気持ち悪い。
そのまま二人して、女子のところに向かった。8歩くらい、すぐ着いた。
女子二人も立ち上がって、おれたちを迎えてくれた。
ひとまず、この場にいる日本人は4人、ってことでいいみたいだ。
一人きりじゃなくて、ほんと良かった・・・。
けど、一番背が低いの、おれっぽい。あ~、年もおれが一番下かなあ・・・。
輪になったところで、ブレザーの女子が話し始めた。
「まずは自己紹介からかな、ひとまず襲われる感じはないし」
「なんか凄い目で見られてるけど、そうだね」
おれは黙って女子二人の制服を見てたけど、となりの男子が返事をしつつ、ちろり、と周囲を見渡した。
その途端、
「こほん、ごっほん!!お話中、申し訳ありませぬが、我々の話を聞いていただけますかな」
びくり、と体が強張る。おれだけじゃなくほかの3人も一斉に酷く警戒しながら、声のほうを向いた。
長い白髭のおじーいさん、がいた。うん、映画に良く出てくる魔法使いの定番ぽい格好してる。
濃い紫のロングスカートみたいな、いわゆるローブ?のようなものを着ているのだ。
その髭じーさんはおれたちの注目を引いて、満足そうに話し出した。
「みなさま、異なる世界より、ようこそおいでくだされました。わたくしはこの度の召喚の儀式において、長を務めましたヨーグドルーと申します。まずはお疲れでございましょうから、この儀式の広場ではなく、別室にてお茶をいかがでございましょう?そちらにて、詳細をお伝えしたく存じます。」
4人で顔を見合わせる。どうする?と目線でちらちら相談しあう。その様子から、全員が言われた意味を聞き取れていることがわかる。イマイチ言葉遣いがわかりにくいが、・・・明らかに発音は日本語じゃないんだが、意味は聞こえるという感じ。ややこしい。でもともかく、つまりは言葉はわかる。
「ひとまず、行こうか。このままここにいても、わけがわからないし」
「そうね。その前に、」声をひそめて
「名前と年は教えてもらえる?あ、念のため小声で。」
近寄ってから話す。
「あたしはセリザワトモカ、17歳よ。高校3年生」
「俺はタカノマコト、17歳、高校2年生」
「わたしはメイドウミナ、16歳、高校1年生」
「・・おれはユウキハルヤ、15歳、中学生」
やっぱりおれが一番年下か~。
「なにがなんだかわかんないけど、同じ日本人としてよろしく」
にこりと笑うマコト、この状況でも本気で友好的な笑顔出せるってスゴいな~。なんか、やっぱりこの人、ほっとする。
「こちらこそ、よろしく」
あっさりと返事したのは一番年上のトモカって人。うん、順当に、年上の二人が和やかな雰囲気作ってくれてる。助かる。
もう一人の女子は何も言わずに軽く会釈した。おれも真似して軽く頭を下げる。
「じゃあ、先に俺が行くよ」マコトがそう言って歩き出した。おれはすぐにマコトの後をついていく。振り返ると、女子二人は並んで歩いていた。
大きな円形の1段高いところ・・・明らかに特別な石で作られていて、だって、少し明るくて淡く光ってる、その上に図形と文字がびっしりと描かれている。たぶん、これ、魔法陣。呪文なんだろうな・・・。そこから降りて、髭じーさんのところへ向かう。頭上を確認して見ると、ドーム型の白い天井が見えた。光が差し込んでいるから、明り取りの窓があるんだろう。おれのところからだと、わからないけど。ここって室内なんだな、かなり広くて・・・うちの学校の体育館より広そうだけど。式場って言われたし、風も日差しもあったから、壁があるとはいえ、外かと思ってた。
髭じーさんが丁寧におれたちに会釈してから歩き出す。先導されるまま、この式場の部屋を出て、廊下を歩いた。式場も廊下も灰色の石造りで、壁には青いラインが描かれている。上下にそれぞれ2本ずつ。広場のドアは木製の両開きで、おれの身長の倍くらいの高さがあったが、案内された部屋のドアは、普通サイズだった。
歩いた距離は・・・よくわからない。緊張してるのに、なんだか実感がないみたいにわほわしてる。感覚が狂ってる・・・。三回曲がって階段上って。結局どのくらい歩いたのか、はっきりしないのだ。時間も距離も、わからなくなってる。
ともあれ、案内された部屋には円卓があり、ゆったりとした椅子も置かれている。
「さ、まずはお座りくだされ。すぐに茶をお出しいたします。ああ、水のほうがよいでしょうか、ふむ、両方、用意いたしましょう。」
くるりと髭じーさんが振り返って、後からついてきた者たちに目配せした。三人もいる。監視されてる感じだなあ。それでも、式場の大人数よりはましだ。さっきはどう考えても20人以上、いたもんな・・・。
この部屋には大きな窓があり、明るい日差しが入ってくる。
ということは、今は昼間かな。
マコトがまず椅子に座った。おれがその左隣に座る。さらにおれの左側にミナと言った女子、トモカという人が座る。
正面には先ほどの髭じーさんが座った。
「改めまして、ヨーグドルーと申します。この国、ラレンシア王国にて、魔導師長と式典長を兼任しております。
このたび、王命により、勇者の資格をお持ちである皆様を異世界より召喚させていただきました。なにとぞ、よろしくお願い申し上げます。」
しーん、と場が沈む。
だってコレ何、どうしろと?
何をよろしくお願い申し上げます、なんだ!
「まずは、お名前をおし」
「その前に、事情をもっと詳しく教えてもらえませんか?」
トモカが強引に話を遮って口を出す。
「この国の名前をもう一度、それから、王命、ですか?あなたの役職についても、もっと詳しく」
「・・・かしこまりました」
それからの話は長かった。トモカさんが仕切っていろいろ質問していた。
どうやら、おれたちの名前はうっかり教えないほうがいいらしい。何度も遮って言わないようにしていた。
髭じいさんは、根気強く質問に答えていく。
「だいたいのことは、なんとなくだけどわかりました、あたしたちに、何をして欲しいのかも。なので、まずは四人で相談したいので、この部屋を貸してもらえます?」
「それはもちろん、みなさまの良いように。ただ、国王陛下にご報告せねば、ですし、皆様にもご一緒に謁見の間に来ていただきたいのですが」
「そんなに、時間はとりません。10分くらい、わたしたち四人だけにしてもらえますか」
そういうと、後ろを振り向いてドアの傍に控えていた人たちを手で指し示す。
「そちらの人たちも出て行ってください。落ち着かないので」
「分かり申した。では、ほんの少し間だけ、できるだけ早く陛下のもとに伺わなければ、ですので。ご説明に随分、時間を使いましたので」
いかにも渋々、という態で、髭爺さんは控えていた人たちを連れて部屋を出て行く。
扉が閉まった途端、
「さて、じゃあ、まずは注意事項から。魔法がある世界だから、うかつに名乗らないほうがいいと思うわ。とりあえず、彼らには、愛称か何かを言って、フルネームは言わないでおいて。
あと、ほんとに彼らが善人かどうか、言ってることが正しいかどうか、わからないから、話半分に聞いておきましょう。ヤバそうだったら、逃げないとね。」
きっちりと背筋を伸ばしてトモカさんが言う。
「良かった、トモカさんがいてくれて助かったよ。ほんと、わけわかんなくてさ」マコトが言う。
「おれも」本気で賛同する。
「あたしだって、わかんないわよ。できるだけのことはするけど。それより、四人で一緒にいられるように気をつけましょ。バラバラにされるのは避けないと。」
「そうだな、相談できないと困るし。知ってる人が全然いないんだもんな。・・・日本人は四人だけか。他に喚ばれた連中がいるかどうかもわかんないしな、今んところ」
「賛成です。少なくとも、男女別にされても、二人ずつ一緒に行動できれば。一人になるのは避けたほうが良さそうですね。最悪のパターンである奴隷にされることは、今のところないみたいですけど」
ピシッと空気が強ばった。
「そっか、そーゆー心配もありか・・」
はああ、とマコトが盛大にため息をつく。
「ともかく、できるだけ四人一緒の方向で。後は一人きりにならないように。名前も呼ばないで、しばらくは様子見しましよう。」
「わかった。他に気をつけることは?」
「うかつに返事をしないこと。はい、って言うだけで承諾したとされると危ないわ」
「つまり、黙ってればいいのか」
「はい、とも、いいえ、とも言わないように、かな。言質取られるとマズイかも、だから」
「わかった。苦手だけどやってみる」これはマコト。
「それで、何て呼んだらいい?」
「ひとまず、姓でいいかな。姓の半分だけ、にしとけば、それと名前を隠しとけば、なんとかなるんじゃない?」
「そうですね、そうしましょう」これはミナ。
まずは自分たちを守ること、そのためにフルネームは言わない、それからできるだけ4人で一緒にいる、この二つだけが決まったところで、ゴンゴン、と派手に扉が叩かれた。
四人で顔を見合わせる。
「行こうか」真っ先に立ち上がったのはマコトだった。
「そうね」次にトモカさんが。
おれとミナは同時に立ち上がる。
出されたお茶と水には、誰も手をつけていなかった。喉は乾いているんだけどな。なんとなく。まだ我慢できるし、味の保証はないしなー。
ともかく、一緒にいればなんとかなるだろう。マコトとトモカさんがいれば。と、この時は思ってました。
誤字脱字の指摘はありがたく。
ともかくも進めていきます!
早くイチャラブ描きたい。