第2ボタン?
3月。この時期になると何故かいつも、第2ボタンのことを思い出す。今、そんなことをしている人はいないだろうけど。
中学、高校ではブレザーだったので、そもそも漫画とかで見たことのある、卒業式で好きな子に制服の第2ボタンを下さいと言われる意味が分からなかった。
いや、実は小学生の卒業式の後に、僕は気になっていた子に第2ボタンをちょうだい! くれるよね? などと、何故か上から目線で言われたことを思い出した。
「え?」
「わたしのことが好きだったんだよね? それならもらってあげる」
「で、でも……」
確かに好きだった。いつも僕にちょっかいを出してきたし、よく話したし、僕の家にも遊びに来てくれた時期もある。その彼女が、中学に上がったら学区違いで会わなくなる。だから無理矢理にでも第2ボタンをもらってあげるなんて言うけど……
「あの、僕の洋服のボタンはその……」
誰がどうみても、学生服でもない普通の洋服でしかも、ボタンというのは、ポロシャツに縫い付けられているボタンだった。
そう簡単にはボタンを外せない。ごめんなさい。そう言おうとした。
「ふぅん? そんなものだったんだ~? あんなに仲良くしてあげたのにガッカリしちゃった」
「違うよ~! 僕は本気で君が好きだったんだ」
ママが卒業式の為に仕立てくれた洋服だったのに、あろうことか、縫い付けられているボタンを無理やり引っ張って、そして――
「ぶちぶちっ」
「え? ウソ」
「これ、僕の気持ち」
そういって僕の洋服の第2ボタン? を彼女にあげた。後で聞いたらからかいたかったと聞かされて、好きは僕の中から消えたけど、これも僕の卒業の思い出かもしれない。
第2ボタンをあげるなんて、誰が始めたのだろう……卒業シーズンになると、苦い思い出と共に思い出される。