王子が不幸になる婚約破棄~真実の愛は、逃げていった 編~
私は、ダコタ・メイ。
前世は、アニメ好きの夢の国でお仕事することに憧れた女子高生。
飲酒運転の酔っ払いに車で轢かれて、心残りしまくりで死んでしまいました。
そして、現在は公爵令嬢で第一王子様の婚約者をしております。
ここは、前世で親友が好きな乙女ゲームでアニメ化もされた『タヌキの蕎麦で、ポンポコリン♪』の世界。
私は、主人公をイジメる悪役令嬢。
よくある乙女ゲーム世界に転生ですと、良い子ちゃんになって悪役回避とか婚約破棄されないように頑張るとか、とにかくバッドエンドを避ける傾向にあると思うのです。
ですが、あえて私はゲームやアニメ通りの『悪役令嬢』を演じきりました。
そしてそして、現在は私の断罪が行われております。
「ダコタ・メイ公爵令嬢。貴様は、アメリー・マーチ男爵令嬢に公爵令嬢としてあるまじき行為をした。そんな貴様は、未来の国母に相応しくない!!! よって、貴様との婚約は破棄する!!! 真実の愛に目覚めた私は、貴様との婚約など続けたくない!!! よって、アメリー・マーチ男爵令嬢と婚約することを宣言する!」
シゴトダイキライ・セプテンバー第一王子様が私を睨付けて言いました。
「姉上、私は貴様を見損ないました」
ジョブライク・メイ公爵令息つまり、私の弟が第一王子様に便乗して言いました。
だって、八方美人だから。
「ダコタ様。罪をお認めください。今なら、許されるわ。 そして、私たちの真実の愛を認めて、シゴトダイキライ・セプテンバー第一王子様のことを諦めてください」
自分の取り巻きたちに見えない角度を計算して、私を小馬鹿にした笑いをして言いました。
「アメリーは優しいな。だが、そんな必要はない。国王陛下とメイ公爵から許可を得ている。今から、貴様はメイ公爵令嬢と名乗るな!貴様は、国外追放の刑に処す!!! 反論は、認めない」
「分かりました」
「うそっ!? そんな、簡単に罪を認めて、処罰を受け入れるの!?」
「事実ですから」
私は、青空の虹を思わせるような晴れやかな笑顔で言いました。
「では、私は今すぐにでも国外に出ます」
「あぁ...」
呆気にとられて言葉を失う第一王子様。
「最後に、アメリー様」
「な、なに?」
「あなた、前世の記憶がありますわね」
「ダコタ様、あなたもやっぱり...なら、なぜ?」
「アメリー様、前世の記憶があれば、あなたもお分かりのはず。王妃になり、雁字搦めの堅苦しすぎる生活を送りたいのですか?」
そう、前世で庶民の生活をしていた記憶があるのなら、高位貴族、まして王族との婚姻は避けたいもの...
はっきり言って、前世の記憶があるから、そんな生活は回避したい。
なので、私は乙女ゲームやアニメと同じように悪役令嬢を演じたのです。
幸い、ヒロインが恋愛脳だったので、わりと簡単に悪役を演じれました。
私の言葉の意味を理解し、崩れ落ちるアメリー様。
「そ、そんな...」
ショックを受け放心状態になる、アメリー様。
数分後、気を取り直したアメリー様は、空気と一体になっている国王様に向かって、
「わ、私も国外追放の刑にしてください。この国の将来を担う者たちを誑かして、いたずらに国を混乱させました。そ、その責任を取ります」
「「「「「ア、アメリーっ!?」」」」」
驚く、取り巻きたち。
「うむ。よく言った。アメリー・マーチ男爵令嬢。其方が罪を認めたことにより、其方の家には処罰をなしにしよう」
「ありがとうございます」
希望にすがりたいシゴトダイキライ・セプテンバー第一王子様は空気を読まずにアメリー様に問いかけました。
「アメリー、どういうことだ? 私との愛は、真実の愛じゃなかったのか?」
「ごめんなさい。シゴトダイキライ・セプテンバー第一王子様。私、気付いたんです。真実の愛だけじゃ、ダメだって。 真実の愛だけじゃ、王妃は務まりません。 そして、なにより、私、王妃という仕事はしたくないんです。 出来ないですもん」
「アメリー、君が努力すれば...」
「ごめんなさい。遠くから、シゴトダイキライ・セプテンバー第一王子様が幸せになることを願っています。 行きましょう、ダコタ様。私を見捨てないでしょう?」
「えぇ、もちろんです。前世の記憶仲間ですし」
「ダコタ、貴様が国外追放されて生きていけるはずがない。アメリーを返せ!!!」
かっこつけて言う第一王子様。
「婚約者でもないのに、名前を呼び捨てるのは止めて下さい。それに、私こう見えて魔法が得意なんです。ドラゴンの十匹程度なら、簡単に滅殺出来ます」
と第一王子様を見て蔑んで言いました。
「それに、今か今かと冒険者仲間が国の関所で待っているんです。それでは、御前、失礼します。アメリー様、行きますよ」
「よくあるファンタジーに出てくるギルドに所属してたの?」
「えぇ。王妃教育のストレス発散にちょうどいいので」
「へぇ。バレなかった?」
「王妃教育は好成績を残せば監視されませんし、両親は弟を王子様扱いして私を道具扱いた上で無関心でしたし。 やり放題ですよ」
晴天の空のような晴れやかな笑顔で私は答えました。
「そう...」
ドン引きして、一言しか言えないアメリー様。
「あっ、私もできるのかな?」
「大丈夫じゃないですか? アメリー様は、剣と魔法の授業の成績がよかったですし」
「そうかな?」
「私なんて、敵に対してシゴトダイキライ・セプテンバー第一王子様や弟や私を道具扱いする両親を思い浮かべて、滅殺上等でしていたら、思った以上に簡単にできましたよ」
やはり、私は澄み切った空のような笑顔で言いました。
「ようするに、敵をムカつくやつだと思って殺ればいいと」
「そうですね」
「私、冒険者仲間に認められるよう頑張るよ」
「その意気です」
アメリー様のことは冒険者仲間にも言って納得してもらっていますし、魔法属性的にも貴重な戦力です。
よーし、今以上にお金を稼ぐぞー。
「アメリー...」
なにか、第一王子様が言っているような気がしましたが、無視して私とアメリー様はこの場を出て行きました。
この時、私は知らなかった。
冒険者として覚醒したアメリー様が、アメリー無双をすることを。
真実の愛から見捨てられた第一王子様が、BなLに目覚めることを。
私は、なにも知らない...