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三国志遊戯  作者: 三十四
184年5月
5/14

第四話

 劉禅と再会したその次の日に、曹操軍は【建寧】へと進軍してきた。これで、曹操軍は【建寧】をも手中に収めることになる。


 【建寧】と【交趾】は隣接する都市だが、その間の距離を軍団で移動しようと思ったら、25日。

 その日数は兵士数が1の場合であり、軍団の移動は大軍であればあるほど日数が消費される。

 そのリスクを冒すより、空白都市の【成都】から【漢中】、もしくは荊州方面へ行ってほしい。頼むから。


 もし、曹操軍が【交趾】へとやってきたら、その時は土下座外交で今度こそ急場をしのぎ切る。三都市の物資を集めたおかげで、かなり余裕があるし、来るまでに日数もある。できる、はずだ。確信がないのがまずいけれど。

 ベストは、迎え撃てる戦力を確保することだ。

 人材を確保し、内政を行い、富国強兵をしていかなければならない。

 今、ようやくにして、その時間が取れたといえる。


「劉禅、【交趾】の在野の武将を探してくれ」


 そのためには、やはり人材。武官でも文官でもいい。もうこうなったら夏侯楙でも文句を言わない。とにかく、人材。


「畏まったのじゃ」


 と、劉禅が執務室の扉を開け放って駆けだしていく。俺も、【人材探索】を選ぶ。



 【一日進みました】


「裕也! 武将を見つけてきたのじゃ!」

 早速、劉禅が人材を見つけてきてくれた。木簡を手渡される。

 まあ、それを見なくても、情報ウィンドウを開けば出てくるんだけど。


【郭図公則】

 統率 21

 武力 14

 知略 72

 政治 54

 魅力 44


【特技】

 【弁舌】


 もう人材が近くにいるだけで朗報だ。

「劉禅、彼女にわが軍に来るように説得してくれ」

「畏まったのじゃ!」

 と、ぴゅーとドアを開け放って駆け出していく。


【一日進みました】

【劉禅が郭図の登用に成功しました】



 うおお! 早い!


「裕也! 登用に成功したぞ!」


 扉を開け放って、劉禅が俺に報告してくる。


「偉いぞ、劉禅!」

「ふふふ、もっと褒めるがよい。褒めるがよいぞ。阿斗は褒めて伸びる子じゃぞ~」


 腰に手を当ててふんぞり返る劉禅。言っては何だが、劉禅のくせに優秀だなあ。

 その劉禅の後に執務室に入ってきた女性は、眼鏡をかけていて、その奥にきつい目が見えた。髪型は前髪を揃えたおかっぱである。

 郭図……は、覚えがないな。どういった人物だったけ? 確か、袁紹軍にいたような気が……それだけだな、知っているのは。所詮にわか三国志オタなのだ、俺は。


「えっと、わが軍に入ってくれる、でいいんだよな?」

「質問があります」


 郭図が尋ねる。眼鏡をくいっとさせて。


「わたくしには、どの役職を用意して下さるのですか?」


 ぎらり、と眼鏡の奥に光る眼。


「もし、わたくしの望みに沿わなければ、失礼させていただきますが」

「一応、【黄門侍郎】と軍師を予定しているけど」

「――え? ぐ、軍師? 本気ですか?」


 このゲームでは最低でも知略が70以上ないと軍師にすることは出来ない。というか彼女以外、うちには成り手がいない。


「えっと、嫌なら」


 正直、俺の軍の役職なんて、選り取り見取りだ。ほかのを選んだってかまわない、と俺がいおうとしたところ。

 ばん、と郭図は机をたたいた。


「やります!」

「そ、そう?」


 鼻息荒い彼女に、俺はたじたじだ。早速、俺は情報ウィンドウを開き、郭図に軍師を任命。


「僭越ながら、この郭図が軍師を務めさせていただきます」


 眼鏡をくいっと上げて、無い胸を張る郭図。その横でぱちぱちと劉禅は拍手する。

 ようやくにして、軍師を決めることが出来た。ようやくだ、本当に。どっと疲れが体に押し寄せてくる。

 ――この世界に来なくても、普通にゲームをプレイするだけでもかなりきつそうだな。

 まあ、ちょっと知略が低いけど、次の人材が出てくるまでは彼女に任せるしかない。

 で、次は。


「劉禅、とりあえず、また人材を探しに行ってくれ」 


「お待ちください。【交趾】には、もう人材はいないかと思われます」


 軍師がいれば、プレイヤーの行動に対して助言を行ってくれるのだ。

 また、任命するだけで、他国からの計略を阻止してくれることがある。それは知略に依存しているけれど。


「うーん、じゃあ、【桂陽】はどうだろう?」


 【桂陽】は荊州四英傑の趙範が治めていた【交趾】の隣接都市である。

 【人材探索】は、自分の領内以外も、空白都市ならば探索することが出来る。まあ、その分、日数がとられるが。

 


「よろしいかと思います」

「じゃあ、劉禅、頼む」

「畏まったのじゃ!」


 ぴゅーっとドアを開け放って駆けだしていく劉禅。


「郭図は、【零陵】で人材探索を頼む」


 【零陵】もまた【交趾】に隣接している都市だ。荊州四英傑の劉度が治めていた都市である。

 あ、そうだ。忘れるところだった。

 俺は、金庫から金を取りだして郭図に渡した。


「これ、褒美だから」


 またどこかの勢力に引き抜かれたらたまらない。なにせ、俺の魅力は1だ。

 彼女はしかし、眉根を寄せただけだった。


「殿は、馬鹿にしておいでなのか? このわたくしが、そのようなもので心を動かすものか」


 え、ええ? 

 受け取ってもらわないと、困るんですけど。

 だって、忠誠度が……て、あれ?


【イベントにより、郭図の忠誠度が上がりました】

【郭図公則 忠誠度 100】

 

 な、何もしてないぞ? しいて言えば、軍師にさせただけで。

 ――そ、そんなに軍師になったことがうれしいのかこの子。


「わたくしには、給金以上のお金など不要です。それでは――」


 そういって、彼女もまた扉を開けて外へ出て行った。

 ありがたいことなんだけど。

 うーん。

 いや、君は、他に適任が出るまでのつなぎなんだけど。

 彼女から軍師をはく奪するときのことをちょっと考えておいた方が良いかもしれない。

 


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