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三国志遊戯  作者: 三十四
2016年7月
1/14

プロローグ

 外は、びゅんびゅんと風が鳴り、轟音を立てて雨が降っていた。

 夏特有の、突然のゲリラ豪雨のようだった。

 そんな窓の外を眺めつつ、俺は一欠伸。ぽてちの袋に手を伸ばして、ぱくり、コーラをぐびり。


「飽きたなあ」


 というのは、PCの画面に展開されている三国志のゲームだった。三年前に発売されたものだ。

 俺は全く三国志なんか興味がなかったのだけど、親父がくれたパソコンの中に入っていたものだ。そのおかげで、今ではまあ、わりと三国志に関しての知識を蓄えられている。

 時折、思い出した時にプレイしているのだが、まあ、さすがに、一年間もやっていると飽きてきた。

 マウスをクリック。


『洛陽を占領しました』


 というメッセージが画面上に現れる。はいはい。

 戦略シミュレーションゲーム特有の、終盤の作業感。これは、もうどうしようもないことだ。AIに任せても、数の暴力によって勝ってしまうのだ。


「明日は学校だしなあ」


 夏休み前だから猶更怠い。この貴重な高校二年生の夏に、こんなことをしていいのか――とは思うが、他に何か思いつくでもない。


「バイトでもすっかなー」


 ゲームのウィンドウを閉じて……もう一度タイトルを立ち上げる。

 もうあとは作業なので、初めからまた開始しようと思ったのだ。


「まだやってない縛りプレイでもやるか―」


 うーん。荊州四英傑は全員クリアしたし、兵器縛りもやったし……いずれも、難易度極悪でだ。

 あ、そうだ。

 俺は、『武将作成』を選ぶ。

 このゲームは、史実武将以外のキャラクターを自由に作ることが出来た。

 その中に、『小田裕也』の名前を持つキャラクターがいる。俺のことだ。

 それを開き、『能力値編集』を選ぶ。


【小田裕也】

 統率 1

 武力 1

 知略 1

 政治 1

 魅力 1


【特技】

 なし


 よし。これで、フリーモード……史実の三国志をなぞるのではなく、全ての武将がフリー状態、誰にも仕えていないモードを選ぶ。

 この小田裕也を、そうだな……一応、外敵の心配のない【雲南】の太守に配置する。それくらいのハンデを貰おう。

 で……あとは、おまかせ、と。

 これでほかの四十か所の地域にランダムで太守が決められ、適当な武将が配置される。

 難易度は勿論【極悪】。親子関係や義兄弟関係などがリセットするモードがあるが、それを切らずに史実に忠実なモードを選ぶ。【小田裕也】にはそういった仲がないので、このモードを選ぶ方が難しくなるのだ。

 よし、よし、面白そうだ。さすがに、これはかなりプレイスキルが求められるな。暇もつぶせそうだ――言ってて悲しくなるけど。

 それじゃ、早速開始ボタンを押す。


【ローディング中……】


 ピカッ


 ドーン


 な、何だ? 爆発? 

 部屋の電気が消えて、真っ暗になる。停電!? あ、どこか近くで雷が落ちたのか!?

 うわ、やばいパソコンのデータが消えてるんじゃ……


「え?」


 画面が、切れていない。真っ暗な部屋の中で、パソコンの画面に、高速で文字列が表示されていく。

 な、なんだ? どうしたんだ?

 その文字列が止まる。明滅。すると――


「は?」


 俺の真上に、穴が広がった。


「ちょ、ちょっと――」


 吸い込まれる――掃除機で吸い取られるみたいに。その中に、ベッドが、ハンガーにかけられている制服が、ポテチとかゴミとか色々が吸い込まれていく。俺は学習机に捕まっていたが、その学習机もまたウキアがる。並大抵の吸引力ではない。訳も分からず、その穴の中へと吸い込まれてしまった。


 ――覚えているのは、そこまでで。

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